米のバイオマス利用で切り開く、未来の循環型社会
捨てられていた米の副産物は貴重な資源の宝庫
日本人は2000年以上も昔から米を主食にしてきました。そんな身近にありながら見逃されてきた米の副産物を「バイオマス(再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの)」として利用する研究が進められています。
例えば、米糠(こめぬか)にはたんぱく質が20%、米油が20%、そしてリンも10%含まれています。米のたんぱく質にはグルテンは含まれていないので、小麦アレルギーの人にも安心です。油切れのよい米油はポテトチップスの製造には欠かせません。さらにフィチン酸と呼ばれる米に含まれるリンはアルツハイマー病予防に効果がある機能性物質としても注目されています。
利用価値のある資源を効率よく回収するには
米糠から純度の高いたんぱく質を効率よく回収するには、リンの存在が邪魔であることがわかりました。そこで、まずリンを、それからたんぱく質を連続して回収する方法が開発されました。最初は捨てていたリンですが、リンは日本では100%輸入に頼っている貴重な資源です。世界的にも産出量が減少しているので、今後その価値がますます高まることが予想されています。米糠のリンを肥料として再利用できれば、日本の将来の循環型農業に大きく寄与することになるでしょう。
燃料やプラスチック、薬にまで広がる可能性
無洗米の製造過程で出る洗米排水もまた、利用価値の高い有望なバイオマスです。洗米排水に米糠を混ぜると、米糠に含まれる酵素の作用ででんぷんの糖化が進み、さらに酵母の働きでバイオエタノールが生成できます。洗米排水は腐敗しやすいやっかいものなのですが、この中から非常に繁殖力の強い乳酸菌も見つかりました。この乳酸菌を用いると、タンクの中では高濃度の乳酸が同時に生成できます。乳酸はプラスチック原料として、さらにはサプリメントや薬剤としての利用が考えられています。
米由来のバイオマスは、新たな産業の可能性につながる、将来的に有望な資源なのです。
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先生情報 / 大学情報
山形大学 農学部 食料生命環境学科 教授 渡辺 昌規 先生
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