地域と学問の強力タッグ~フィールド科学の魅力とは~
地域に貢献する学問
広島県北部にある庄原(しょうばら)市は、米の一大産地です。収量、品質ともに高く、品評会でも優秀な成績を上げています。しかし、ほかの地方都市と同様に、高齢化による農業人口の減少や、後継者不足に悩まされていて、生産品目が米に偏っていることも大きな課題です。
庄原のような例に対して、生命環境学(農学)における「フィールド科学」という分野では、農学的な知識や理論を生かしながら、地域の農業従事者とともに、農業の活性化や雇用創出につながる研究が行われています。
第六次産業を創り出す
フィールド科学の主なテーマに、生産(第一次産業)から、加工(第二次産業)、販売(第三次産業)までを一体的に行う第六次産業の創出があります。
庄原市では「袋利用栽培」という試みがなされています。これは「フラッシュ紡糸不織布(ふしょくふ)」という、中に詰めた土の温度が上がりにくい袋を使って、トマトやアスパラガスなどを育てる農法です。ポイントとなるのは、米の苗を育てるためのビニールハウスで栽培することです。米の育苗は春に行うため、残りの期間が「未利用資源」となっているビニールハウスを有効活用するのです。袋利用栽培なら、ハウスの育苗環境を維持したまま、米以外の特産物を生み出すことが期待できます。
地域の未利用資源の活用
袋利用栽培に用いる土には、米のもみ殻が使われます。ほとんど利用されていないもみ殻は、粉砕して土に混ぜると野菜の栽培に適した水はけのよい培土になります。さらに、もみ殻は軽いので培土の総重量が抑えられ、持ち運びも容易であるなど、農家の高齢化を見据えた未利用資源の活用策といえます。
このように地域と一体となって、課題に向き合っていく点がフィールド科学の醍醐味です。地域には未利用資源が残されていることが多く、将来的にはAI(人工知能)や情報通信技術、ドローンといったテクノロジーも組み込んだ、さらなる地域貢献が期待されています。
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先生情報 / 大学情報
県立広島大学 生物資源科学部 地域資源開発学科 教授 甲村 浩之 先生
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