海底下にある膨大な生命と、今も未知の遺伝子の秘密に迫る
40%の遺伝子は機能が未解明
私たちの体も微生物も、DNAの一部分である遺伝子の設計図によってつくられています。人間の体には、約23000個の遺伝子があり、大腸菌といった単細胞でも4000個ほどの遺伝子をもちます。
遺伝子はそれぞれ異なる役割をもちますが、実は機能や役割がわかっていない遺伝子があります。全遺伝子の約40%、人間なら約1万個もの遺伝子の機能が不明なままです。これを「機能未知遺伝子」といいます。ある微生物で、どこまで遺伝子を減らしても生き続けられるかを試した実験があります。結果、生きるためには機能未知遺伝子が約30%存在している必要があるとわかり、遺伝子機能の解明研究が続いています。
海底下には膨大な未知の遺伝子がある
また、地上だけでなく、海底下にも微生物が存在します。海は、地球面積の約7割をしめますが、さらに掘削した海底下には、10の29乗細胞オーダーもの多種多様な微生物が存在する巨大な生命圏があります。高速で大量のDNAの構成を解読する次世代シークエンサーという機器もあり、すでに数多くの海底下微生物DNAの塩基配列が解っています。しかし、海底下微生物遺伝子の約35%は、これまでに発見されていない新しい遺伝子の配列をしています。これらも機能未知遺伝子です。
新発見がさらなる生命の解明へ
現在、すでにプラスチックを分解する微生物が発見されていますが、そのような有用微生物の遺伝子機能が新たに解明されれば、SDGsや医療などに貢献できる物質の開発につながるでしょう。しかし、微生物は培養が難しいものばかりです。大腸菌などは培養するとすぐに複製されて増えますが、海底下微生物の中には過酷な環境なためか、増えるのは1000年に1度、または1万年に1度とも考えられているものもいます。
そのため、培養や遺伝子の配列などではなく、遺伝子が発する現象から機能を探る手法でも検証が進められています。これらの手法を使い、遺伝子機能を明らかにすることが、生命現象のより詳しい解明へつながります。
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