地球から月面まで! 食料の安定供給を実現する環境制御

食料の安定供給をめざして
日本では、開発や高齢化による農業人口の急速な減少や異常気象により、食料の安定供給が心配されています。こうした中、安定的な食料生産を持続するため、農業の省力化や、省資源・省エネルギー的な生産技術による環境負荷の軽減などの研究が進められています。
特に、環境制御が可能なスマート温室や植物工場では、高品質な農産物を周年安定供給や自動化が進められ、植物による機能性物質や医薬品生産などへの応用も期待されています。
環境制御でできること
温室トマトの水分状態を示す画像や、日射、気温、湿度などの環境情報を「モニタリング」することで、次のかん水量を自動コントロールし、果実糖度や収量を制御する研究が実施されました。
また、温室内の環境情報からトマトの成長速度を推定する「生育モデル」を利用し、次の環境条件を決定することで生育制御が可能です。ただし、温室の最近の課題として、夏の高温対策があります。温室は気温を上げる施設なので、下げるのは不得意です。そこで細霧冷房や換気などの設備で、植物に好適な環境を実現しています。
植物工場ではさらに精密な環境制御が可能で、生産の自動化も進んでいます。自然界にない光・温度条件も実現できる利点を生かし、高機能野菜や薬用植物、医薬品原料やワクチン生産にも利用する研究が進んでいます。これらの設備には資源やエネルギーが必要ですが、再生エネルギーへの移行や資源の利用効率を高める技術開発なども同時に進められています。
月面で食料生産?
近年、世界各国で月面での安定的な食料生産を実現する研究開発が進んでいます。温室や植物工場の研究で得られた環境制御技術を応用し、気圧や重力などが地球と異なる月面で、限られた資源を効率よく利用した食料生産技術が開発中です。
まずは長期滞在に必要な栄養を賄うための数種類の作物について、最適な栽培方法を探索する研究が進められています。宇宙空間での資源循環システムの研究が、地球での持続可能な生産技術になると期待されています。
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千葉大学園芸学部 准教授彦坂 晶子 先生
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植物環境工学、園芸学、植物生理学先生が目指すSDGs
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