まだ解明されていない「かゆみ」や「痛み」の対処法の確立に向けて
かゆみや痛みに対する根本的な治療薬は、まだない
かゆみや痛みがあると、人は不快になり、ひどくなると不眠や症状の悪化を引き起こします。実は、かゆみや痛みといったメカニズムはまだ解明されておらず、対処できないケースも多々あるのです。
アトピー性皮膚炎や帯状疱疹といった疾患や化粧品や医薬品による副作用などから生じるかゆみや痛みは身近な苦痛です。かゆみや痛みに対して処方される薬のほとんどは、それぞれ「抗ヒスタミン薬」や「抗炎症薬」です。しかし、効かないケースも多くあります。これは、知られていないメカニズムがその発生の原因になっていることを意味しています。
メカニズムや要因の解明で創薬や治療につなげる
現在、病態動物モデルを用いて、行動薬理学、細胞生物学や免疫組織化学といった学問分野での研究や検証によって、かゆみや痛みのメカニズムが解明されつつあります。その結果、皮膚表層の大部分を占めるケラチノサイトという細胞や皮膚内免疫系細胞が、かゆみの誘発に関わっていること、また、免疫系細胞は、さらに痛みの誘発にも関係していることも明らかになってきました。さらに検証を進めることで、新しい薬の開発につながるでしょう。
また、対処方法は薬だけに限りません。医師と連携して解決法を探ることも大切です。かゆみや痛みを発生させる根本的な原因が何かを検証し、必要に応じてレーザー照射や手術といった外科的手法も用います。要因と解決策を探ることで、最適な治療を提供できるようになるのです。
より効果的な薬物療法を増やす
かゆみや痛みが、どんな病気から起こっているのかや、どんな症状なのかを正しく把握した上で、処方された薬の効果の有無を検証することも薬学の役割です。現場で起きていることをもとに、病態や症状のメカニズムを解析、検証します。その結果を臨床現場にフィードバックし、改善を図るのです。人や病気によってそれぞれ異なる痛みを一つひとつ検証して、エビデンスを増やすことで、未来のよりよい医療につながっていくのです。
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金城学院大学 薬学部 薬学科 教授 安東 嗣修 先生
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