通信技術の未来を拓くものとは?
通信の高速化にある代償
通信ネットワークの高速化と大容量化が進み、簡単にYouTubeでフルHDや4Kといった高画質動画が楽しめるようになりました。しかしその代償として、通信ネットワークにおける消費電力は上昇の一途をたどっています。問題は通信機器そのものではなく、光データを電気に変換するデジタル信号処理にあります。高速処理の負荷がかかった電子チップの熱を冷やすため、冷却器もフル稼働させなければならないからです。2020年代には通信ネットワークにおける電力が国内の総電力を上回るという試算もあり、早急に対策を行うことが必要です。
「光のチップ」と「多チャンネル構想」
電力の消費を抑えるため模索されているのが、光データを電気に変えることなく光のまま送る方法です。理論的には光素子のチップを使えば可能になるのですが、電子チップと同等の高速処理ができるかが高いハードルとなっています。また光ファイバーは原則1回線しか使うことができないため、数学的な行列による「符号」を鍵代わりにした多チャンネル化が併せて考えられています。簡単に言えば「送信側が鍵を掛け、受信側は同じ鍵を使って開く」というもので、この方法であれば同時に複数の回線に使用することができます。
「アナログ」は古くない!
光のネットワークは2000年代半ばからずっと、デジタル信号処理を中心に進められています。しかし技術的な歴史で言えばデジタルとアナログを繰り返すことで発展してきた経緯があり、さらなる進化のためには再びアナログ的発想も必要になるでしょう。実際の世の中はアナログ信号であふれています。例えば音楽の録音・再生は、アナログな音圧をデジタルな情報へと変換して録音し、聴くときはまた音というアナログなものにして再生しているわけです。
デジタルとアナログは新旧ではなく一長一短の関係にあり、製品開発の際には両者の長所をどう生かすかというハイブリッドな考え方が求められるのです。
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先生情報 / 大学情報
山梨大学 工学部 電気電子工学科 教授 塙 雅典 先生
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