無重力が広げる材料開発の可能性~その理由とは~

無重力が広げる材料開発の可能性~その理由とは~

地上と宇宙、何が違う?

宇宙での無重力状態では、私たちが普段当たり前に思っていることが当たり前ではなくなります。例えば、物が落下せず、宙に浮いてしまうため、水差しからコップに水を注ぐこともできません。家庭で使われている床暖房やホットカーペットでは、主に人が触れている部分から暖を取っていますが、人が宙に浮いてしまうので、宇宙では十分な役割を果たせません。また暖かい空気は軽く、冷たい空気は重いことから、地上では空気が動く対流と呼ばれる現象が起きます。ところが、無重力状態では重さがなくなるので、対流も起こりません。そのため、地上では細長いろうそくの炎は、無重力では丸い形となります。

容器のいらないメリット

無重力にはさまざまな利点があります。例えば、材料の合成実験をするとき、地上では容器に入れる必要があるので、そこから不純物がわずかに混入する場合があります。無重力なら空中に浮かせたまま実験ができるので、純度の高い物質が作れるのです。また、重い物質と軽い物質が分離せず、均一に混ぜることが可能となります。

「過冷却」が生み出す新材料

水は通常は0℃で氷になりますが、水が凍るためにはなんらかの刺激が必要であり、何も刺激を与えないように冷やしていくと、-20℃くらいまで液体のまま冷やすことができます。これを「過冷却」と言います。水は普通、容器に接している部分や混入している不純物から凍っていきます。ですから、容器のいらない無重力状態では、過冷却を起こしやすくなります。過冷却状態の液体は、振動などの刺激を与えた瞬間に固体になります。
過冷却は、水以外の物質でも起こる現象です。無重力状態で、金属を混ぜて作った合金を高温で融解し、冷やしていくと、過冷却が起こります。この状態から固体化させると、結晶構造などの異なる、新しい合金が生まれる可能性があります。これまでにない機能を持った新材料や、技術革新を可能にする次世代材料が、こうした無重力実験から生み出されていくかもしれないのです。

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千葉工業大学 工学部 先端材料工学科 教授 小澤 俊平 先生

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材料工学

メッセージ

大学で何を学びたいか考えるとき、イメージだけで決めないでください。あなたが今持っているイメージは、正しくなかったり、ほんの一部だったりするかもしれません。例えば、「材料」という分野は地味に見えますが、新しい製品は常に新しい材料によって生まれます。材料工学を学ぶには、物理の勉強も大事ですが、今まで見えなかったことが見えてくるよう、広い視野を持つことも大切です。好きな科目や得意科目以外も頑張ってください。

先生への質問

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芸の上達には、向き不向きというより、好きか嫌いかが大きく影響すると言われます。学問の道もそれに違わず、まずは興味・関心を持てることが大切です。そしてそれができたら、あとはちょっぴり努力とともに創造力を働かせればいいのです。いま「できない」ことはまったく問題ではありませんし、気にすることもありません。本学では、基礎から学べるカリキュラムが充実していますので、安心してあなたの未来が築けることでしょう。