同種に見えてもまったく違う! 実は害虫だけではないハダニ
害虫となるハダニは少ない?
ハダニは、植物寄生性のダニで、一部は野菜や花卉、果樹の葉などを加害する農作物の害虫として知られています。しかし、日本に生息する約90種類のハダニのうち、害虫とされているのは10種程度であり、多くは人の目につかない森の中などに生息しています。
新種のハダニを発見
ハダニの生態や分類に関する研究は主に害虫種に偏っており、森に生息しているハダニは未知の部分が多く、新種も次々に見つかっています。特に同種だと思われていた個体が実は別の種類だった、という事例が多くあります。例えばキンモクセイに寄生する「モクセイマルハダニ」は、以前はミカンやナシの害虫であるミカンハダニと同種だと考えられていました。しかしミカンから採集したミカンハダニは、キンモクセイでは飼うことができませんでした。そこでミカンに寄生していた個体とキンモクセイに寄生していた個体を交配させる実験を行ったところ、子孫ができないことがわかりました。その後、両者には形態にも違いがあることが分かり、キンモクセイに寄生するハダニはモクセイマルハダニという新種となったのです。モクセイマルハダニはモクセイにのみに寄生するため、通常は害虫として扱われていませんが、大量発生してキンモクセイの葉の色を白くしてしまうこともあるため、場合によっては街路樹の害虫となります。
害虫の認識は人それぞれ
ハダニに限らず、害虫とそれ以外の線引きは人の立場によってさまざまです。例えばゲジという虫は、畑に発生するほかの害虫を食べてくれるため、益虫として重宝されます。しかし食品工場に侵入した場合、ゲジの脚が取れて異物混入の原因となりかねないため、害虫となってしまうのです。
食品工場は害虫対策が求められる場所のひとつですが、衛生管理の観点から殺虫剤による駆除は好まれません。害虫の餌や隠れ場所を残さないようにこまめに掃除をするなど、発生源に応じた効率のいい対処方法が必要であり、食品工場における害虫管理システムの研究も進められています。
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茨城大学 農学部 地域総合農学科 准教授 北嶋 康樹 先生
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