植物は自らの傷をどうやって知って、治しているのか?
神経がないのに、なぜ傷ついたとわかる?
多くの植物には、組織の一部が傷ついても、その傷を修復することのできる能力が備わっています。しかし植物には、人間や動物のような神経や血管はありません。植物はどのようにして、自らの組織に傷がついたことやその場所を感知し、傷を修復しているのでしょうか?
植物ホルモンの流れが示す傷の位置
植物に傷がつくと、傷がついたことやその場所を植物自身が感知しなければ、修復することができません。その際、植物ホルモンが重要な役割を果たしていることが明らかになっています。ある植物では、茎の上から下に方向性を持って動いていく植物ホルモンがあり、その動きが傷の部分で止められると、どの細胞が傷より上か下かを感知し、傷で失われた部分を作り直す作業を始めるのです。傷ついた部分が作り直される際には、表面組織や水や養分を運ぶ組織、植物自体を支える細胞など、さまざまな種類の細胞が必要となります。それらの細胞がどのように分化してそれぞれ適切な位置に配置されるのか、その仕組みに関してはまだわかっていないことがたくさんあります。
「接ぎ木」に関する数多くの謎
こうした研究の延長線上にあり、今、世界的にも注目されているテーマとして、植物の「接ぎ木」についての研究があります。接ぎ木とは古くから用いられている植物の栽培方法の一つで、台木(だいぎ)と呼ばれる土台の植物に違う植物の穂木(ほぎ)をくっつけて栽培する方法です。農業技術として広く用いられているこの接ぎ木に関しても、なぜ違う植物同士なのにくっつくのか、どのような仕組みでくっついているのかなど、明らかになっていない謎が数多く残されています。
最近は、実験方法や分析技術が急速に進歩しており、わずかな量のサンプルで精度の高い分析ができるようになりました。接ぎ木に関する数々の謎も、これから解明が進んでいくのではないかと期待されています。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 理工学部 バイオサイエンス学科 准教授 朝比奈 雅志 先生
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