言葉の背後にある文化~形式知と暗黙知~
切り離せない言語と文化
言語の習得は世界とつながる行為の代表的なものだと言えるでしょう。言語は、世界のとらえ方や社会的アイデンティティなど文化を象徴し、表現しています。例えば、日本語環境で必ず毎日言う「いただきます」は、あえて訳せば、英語なら「Let's eat」、中国語なら「我開動了」となりますが、これらは「食べ始めましょう」という意味であって、「いただきます」の本来の意味とは異なります。「お肉も魚もお米もすべて命のあるもので、その命をいただく」という感謝の気持ちを表す文化的な意味は、訳されていません。
言語文化の形式知と暗黙知
言語文化はダイナミックな知です。文法や発音の仕方など、言葉で説明できるものを「形式知」と言います。それに対して、言葉で置き換えることが難しいとされる「暗黙知」もあります。価値観、思考パターンなどの文化的知識はほとんど暗黙知です。例えば、日本語にオノマトペ(擬音語・擬態語)がたくさんあります。「ぷよぷよ」と「ぷにょぷにょ」は音が似ていますが、日本人ならそれぞれのイメージがすぐに浮かぶと思います。しかし、日本語を学習する外国人にはなかなか区別ができません。オノマトペは五感のイメージを表す感性的なものです。そのイメージが暗黙知であり、日本語母語話者でも説明することが難しいのです。
言語文化を統合的に学ぼう
グローバルに活躍するには、現地の文化を理解した上で言語を流暢に話す能力が求められます。翻訳アプリが非常に便利になってきた現在、情報のみの交換であれば簡単にできるようになりました。しかし、お互いが本当にわかり合えるためには、それぞれの文化を尊重し、理解することが重要です。言語を学ぶことは、言葉の裏にある「暗黙知」に留まる文化をも理解することです。暗黙知には、言語に変換できる部分と変換できない部分があります。言語に変換されにくい暗黙知については、体験・実践を通して身につけていくことができます。それらを身につけることで、コミュニケーション能力はより向上します。
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先生情報 / 大学情報
九州大学 共創学部 共創学科 准教授 李 暁燕 先生
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