謎の多い樹木と環境の関係を読み解く「樹木生理学」
人間の生活になくてはならない森林
人は様々な形で森林の恩恵をうけています。紙や木製品の多くは、人が植えた森林や天然の森林から得られた木材でつくられています。また、大雨による土砂崩れを防いだり、強い風や高波から畑や住宅を守ったりするためにも、森林がつくられてきました。新たに森林をつくるには、より早く成長する樹木が適していると思うかもしれませんが、慎重に見極めなくてはなりません。例えば外来種の中にはとても成長が早い樹木がありますが、植える場所の環境に合わずに枯れたり、逆に環境に大きな負担を与えたりしてしまうことがあります。このように、人間と切っても切り離せない関係にある森林や植生、樹木について研究する学問を、「樹木生理学」といいます。
樹木と環境を分析する
森林研究においては、フィールドワークも重要な手段です。実際に森に入って木の高さや直径を測ったり、周辺の土に含まれる水分量や無機養分を調べて、木が環境から受けるストレスを分析したりします。また、木が水を吸い上げる量と、その水を使って光合成する量を測って、木の「水利用の効率性」を調べることもあります。森林には、他の場所から水をもってくることは困難です。その地域に降る雨の量だけでは足りず、地下の水資源をどんどん使ってしまうようなとき、その植林は成功といえるでしょうか。
自然の複雑さに向き合う
木はとても寿命が長いため、実際に木を植えた人がその結果を知ることなく亡くなることもあり得ます。だからこそ、森林や樹木、環境の性質をデータ化し、科学的に見極める森林科学の知見が求められるのです。
自然環境はとても複雑で、因果関係がはっきりしない現象も多く起こるため、研究は簡単ではありません。しかし言いかえれば、解明されるべきことがまだまだ多く残されているわけです。樹木生理学は、地球全体で問題になっている自然環境の変化に向き合うためにも、大きな役割を担う学問なのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 里地里山環境管理学コース 講師 岩永 史子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
樹木生理学、樹木生理生態学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?