世界での食品安全の実現に向けて
食の安全は完璧ではない
食品は、漁業や農業などの生産者から、加工や物流を経て飲食店やスーパーなどの外食・小売業者に渡り、消費者に届きます。各段階で安全、品質、衛生管理のルールがありますが、毎年のように食中毒や異物の混入といった事案が発生しています。なぜなのでしょうか。
手洗いや服装、器具の洗浄、調理温度などのルールを守るのは人間です。どんなに管理しても、おろそかになったり、見落とされたりすることもあります。それらをゼロにする方法は、今のところありません。また、従業員が「ルールを守っている」つもりでも、正しくできていないというギャップが起きたりもします。そうして安全管理がおろそかになると、食中毒や異物混入などによって健康危害を与える加害者になる恐れがあるのです。
世界で取り組んでいる課題
これは日本だけでなく、世界共通の課題です。世界中の食品関連企業が集まる団体において、解決を図ろうと、「食品安全文化」をつくる取り組みが始まっています。これは、単に監視を強化するだけでなく、自然に安全管理の行動ができるような文化を構築しようとする試みです。
例えば、保護者は赤ちゃんや家族への食事には細心の注意を払い、「安全で良いものを食べさせたい」と思うことでしょう。こうした意識を安全管理に取り込めないか、試行錯誤が続けられています。また、各国ごとに食品安全規格がありますが、それを国際的に標準化し、マネジメントしようとしています。
安心して食事ができる社会へ
この試みでは、人はどのような時にどんな行動をするのかという心理学や行動学などをもとに、人の行動をマネジメントすることが必要です。さらに、企業内外の情報をどう管理するかといった、経営情報学など学際的な検証も不可欠です。
食の課題は、食中毒や異物混入だけではありません。食物アレルギーのある人、飲み込む力が弱い人など、食に関する「事情」を抱えている人もいます。事情のある人も、そうでない人も、誰もが安心して食事ができる社会づくりが今、始まっているのです。
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