食品にリスクは必ずある。それを認識することが大切!
賛否が分かれた「生レバー禁止」
2011年、富山県などの焼き肉チェーン店でユッケを食べた5人が死亡するという悲惨な事件が起きました。原因は、腸管出血性大腸菌O111でした。大きな社会問題となり、牛の肉を生で食べることのリスクが広く認識されました。その後、厚生労働省の調査によって、生レバーの内部でも腸管出血性大腸菌(O157など)が見つかりました。殺菌する方法はいまのところ加熱以外に見つかっていません。だから生レバーも危ないということで、2012年7月に、飲食店での生レバーの提供が禁止となりました。ただしこの禁止には賛否が分かれ、大きな議論を呼びました。
野菜も卵も、生で食べればリスクはある
牛のレバー内部から腸管出血性大腸菌が実際に見つかることは極めてまれですが、リスクはゼロではありません。野菜、卵、魚などの生食は、日本では昔から広く親しまれてきた食文化です。では、野菜や卵にリスクはないのかと言えば、そんなことはありません。リスクがゼロではないからといって禁止するということを突き詰めれば「生で食べる」という文化そのものがなくなってしまいかねません。生レバーの提供禁止は、食肉業界への打撃も大きく、不満を持つ消費者も少なくありません。生産者と消費者の双方が食の安全と食文化について真剣に考えるきっかけになったのではないでしょうか。
リスクの存在を認識することの大切さ
現在の日本では、あらゆるもののリスクが低く抑えられるようになっていますが、それは関係者の長年の努力でようやく実現したものなのです。例えば、オゾン滅菌した海水で魚介類を洗浄することや流通の各段階で8度以下の温度を保つことで、腸炎ビブリオ食中毒は激減しました。また、水道水で食品をよく洗うことで、塩素の力で殺菌できることも知られています。リスクゼロはあり得ません。リスクをやみくもに恐れるのではなく、どうすれば軽減できるのかを知って「食」の安全・安心を考えることが大切です。
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大阪公立大学 獣医学部 獣医学科 教授 山崎 伸二 先生
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