アンドロイドが人間のコミュニケーション行動を変える!?

アンドロイドが人間のコミュニケーション行動を変える!?

人はアンドロイドに特別な反応をする

人間は、どんなに精巧に動く機械の形をしたロボットより、人間の姿をしたロボットに関心をもちます。仮に相手がアンドロイドだとわかっていても、人間の反応は、機械の形をしたロボットに対するものとは違ってくるのが興味深い点です。ロボットとのコミュニケーションが可能だと感じている人の場合、人間型のロボットに対してはアイコンタクトの回数が多くなるという実験結果があります。また、ロボットが手を動かすと自分も手を動かすなど、動作をシンクロさせる行動も見られるのです。

アンドロイドを人間らしく思う不思議

電車の中で見知らぬ誰かとふと視線が合って、あわてて目をそらしてしまったことはありませんか? 人間は、相手が「社会的な存在だ」と認識すると、ずっと目を見続けられずにそらしてしまう傾向があります。話している相手の目を見ていても、一定の時間がたつと視線をそらし、また目を見るという動作を繰り返しています。メカニカルなロボットから視線をそらす人はいませんが、見かけが人間らしい精巧なアンドロイドが相手だと、人はつい目をそらしてしまうことが多いのです。これは、アンドロイドだとわかっていても、無意識下では人間だと思っているからかもしれません。人間が人間に接する時には、ある一定の距離(パーソナルディスタンス)を取るものですが、アンドロイドに対しても無意識に一定の距離を取ってしまうことから、人間の意識がどれほど見かけに左右されるのかがうかがえます。

ロボットをどうデザインすればいいのか

ロボットをコミュニケーション可能な存在だと思うか、それともただの機械と思うかで、生活の場で人と接して作業をするコミュニケーションロボットの世界は大きく変わってきます。今まではロボットの「見かけ」に対して、研究者はほとんど関心を寄せてきませんでした。何をどうデザインしてどのような造形にすれば、人工物をコミュニケーション可能な存在だと感じるのか? これはロボット研究における大きな課題のひとつなのです。

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大阪大学 基礎工学部 システム科学科 知能システム学コース 教授 石黒 浩 先生

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メッセージ

「人間とは何か?」。人間が生きることの命題は、この質問の答えを突き詰めていくことにあるのではないでしょうか。動物と人間の違いは何でしょう。人間としてのプライドを本当に自覚して生きている人はどれだけいるでしょうか。人間は本来生きる意義を持たずに生まれてきて、生きる意義を自分で見つけるために人生を生きるのだと思います。ただ「頑張っている」だけでは意味がありません。生き延びようとする力をつけ、生きる意義を見いだしてこそ、人間は人間になっていくのだと思います。

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自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。