人工的に砂嵐をつくり、雑草をやっつけろ!
貴重な景観を保っている、鳥取砂丘
「砂丘」は、海岸から風に乗って砂が運ばれ内陸に溜まってできた、文字通り“砂の丘”です。鳥取砂丘がその代表格ですが、日本中に砂丘がたくさんあります。規模では鳥取砂丘より大きい、山形県の庄内砂丘もあります。しかし庄内砂丘は植林が進み畑も増えて、風によって砂が動く様子が見られる、いわゆる“砂丘らしい景観”とは少し違う風情になっています。
鳥取砂丘は砂丘らしい景観が保たれている場所です。1955年に国の天然記念物に指定され、地形遺産を含む自然公園「山陰海岸ジオパーク」の西端に位置します。2009年には197万人以上の観光客が訪れました。
砂丘に雑草が生えるのはなぜ?
鳥取砂丘では1970年ごろから外来の雑草が生えるようになり、深刻な問題になっています。放っておけば雑草が伸びて草原化するとともに、昔から砂丘に生えている植物をおびやかすのです。そこで景観を守るために、毎年3000人を超えるボランティアが除草作業を行っています。
ところでなぜ、砂丘という特殊な環境に雑草が生えるのでしょうか? 疑問を解き明かすために、ある仮説が立てられました。砂丘に雑草が生えるのは砂があまり動かないからではないか、というのです。これを証明しようと、逆に砂丘の砂が動く状況をつくると植物はどうなるのかが実験されました。
効率的かつ環境にやさしい除草活動
植物に砂がよく当たるような状況をつくり出すため、農業用の肥料撒き機に砂を入れ、風速20mくらいの嵐のような砂風を植物に当ててみました。すると昔から砂丘に生えている“ビロードテンツキ”のような植物は、一旦弱ったように見えても徐々に元気を取り戻しましたが、外来の雑草は枯れてしまいました。
このように、砂を吹き付けることで雑草の少ない環境をつくりだす手法を“sandblasting法”と言います。機械や除草剤に頼らず、大勢のボランティアのような人手も要らない、効率的で環境にも負荷をかけない方法として研究が進められています。
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先生情報 / 大学情報
鳥取大学 農学部 生命環境農学科 里地里山環境管理学コース 教授 小玉 芳敬 先生
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