人が集まる都市の公共空間の仕組みを分析し、演出する都市社会学
見知らぬ人同士が共存する都市社会
都市とは、多様な人々が多数集まる場所です。隣人も街ですれ違う人も、自分の知らない人です。人間がつながる契機としては、一般的には、よく知っている者同士や似た者同士の場合が多いですが、都市では異質な人が集まるので、人間関係が希薄になります。関係が希薄なのにたくさんの人が集まる、というパラドックスのような状況をつくっている空間が都市だと言えます。
人が集まる公共空間には暗黙のルールがある
都市という社会には、関係が希薄な人々が共存するための、特有の仕組みがあります。例えば、電車の中では他人と目を合わせないという「儀礼的無関心」がそうです。「電車や店の中で見知らぬ人と隣の席になっても、突然危害を加えられることはない」と相互に信頼できるのは、こうした暗黙のルールに従っているからです。
ただし、暗黙のルールは地域によって異なります。「都市社会学」という学問では、フィールドワーク(野外調査)によって人々の振る舞い方を観察し、その意味を解明していきます。
魅力的でにぎわいある公共空間を演出する
都市社会学ではよく、「都市は舞台、人々は役者」と言われています。舞台が変われば役者の演技も変わります。言い換えれば、人々の公共空間での振る舞い方が、社会の姿形をつくるのです。まちづくりにおいて、公共空間がぎすぎすした冷たい雰囲気であるより、人々が生き生きと楽しんでいる方が、地域社会は住みやすいものとなります。そのために、舞台に例えて言えば、演出を工夫したり、適切な大道具・小道具を用意したりすることには、かなりの効果があります。例えばニューヨークでは、ビルとビルの間にポケットパークと呼ばれるちょっとした公園のような場所をつくることが奨励されました。そこに人が滞留できる空間があることで、通過するだけの場所が、人が憩う空間に変わります。
舞台と役者の関係を解明することで、効果的な演出をすることに貢献できる、それが都市社会学なのです。
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先生情報 / 大学情報
帝京大学 経済学部 地域経済学科 教授 松尾 浩一郎 先生
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