「浸水の確率は〇%」 災害対策を進化させる確率論的評価とは?
「確率論的評価」の重要性
2011年の東日本大震災で起きた津波は、それまでの想定を超える規模でした。また、昨今の気候変動により台風や低気圧の規模が変化し、「想定外」の高潮や浸水が起こるようになりました。
これまでの災害予測は主に、過去に起きた災害のデータを基にして「最悪の場合はこのくらい」と決める「決定論的評価」に基づいていました。しかし、気候が変わりつつあり、また、今後の大規模地震発生の懸念もある現代の災害予測には、自然現象の不確定な要素も取り入れて計算する「確率論的評価」に基づく災害対策が必要になると考えられます。
「降水確率」のように災害を予測
自然現象の評価には不確定性がつきものです。例えば「千年に一度の大津波が起こる可能性がある」という予測があっても、それがいつ、どこで起きるのかは、正確にわかりません。その津波に備えようとすると非現実的なまでの防災対策をしなくてはならなくなり、人々が思考停止に陥って防災意識の低下につながる可能性もあります。
そうした自然現象の評価の不確定性も取り込んで起こる確率を数学的に計算し、「Aが起こる確率は80%、Bが起こる確率は50%」など、降水確率のように予測をするのが「確率論的評価」です。それによって、現実的なレベルの備えをしつつ最悪の事態も視野に入れる、という防災対策が可能になります。
防潮堤の設計基準やハザードマップにも
確率論的評価に基づいた予測は、防潮堤や堤防の高さ等の構造物の設計基準にも生かすことができます。また、現在日本で出されているハザードマップは、基本的には各地域で考え得る最大級の被害想定のみが示されていますが、これらを確率論的評価に基づくものに変えると、発生確率が示された何種類かの被害想定が発表されることになります。確率表現をどのように捉えるかは人によって異なることが想定されるため、客観的な解釈が難しいこともありますが、その反面、柔軟な災害対策につながる可能性があります。
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関東学院大学 理工学部 理工学科 土木・都市防災コース 准教授 福谷 陽 先生
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