橋を造ったり補強したりするための素材「FRP」とは?
軽量で丈夫な「FRP」
橋の材料は、主にコンクリート製か鋼製ですが、新たに3番目の素材として、FRP(繊維強化プラスチック)が注目されるようになってきました。FRPとは、プラスチックにガラス繊維や炭素繊維などを入れて強度を増した素材で、軽量かつ丈夫で、腐食せず加工しやすいなどの点から、テニスラケットやゴルフクラブのシャフト、船や航空機の材料など、以前からさまざまな用途に使われてきました。なかでも炭素繊維を用いたFRPの一種、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)では、繊維方向への引張強度は鉄の数倍です。2000年頃から土木の分野でも使われ始め、橋の補強材・補修材としても普及しつつあります。
橋を補強する素材として実力を発揮
日本では、長さ2m以上の橋は、5年ごとに近接目視による検査が義務づけられています。コンクリート製や鋼製の橋は、水、塩分、二酸化炭素、紫外線などの環境作用や車両の走行、風・地震などの荷重作用などにより劣化し、危険な状態になることがあるためです。そうなった橋を補修するため、あるいは劣化を予防するために、FRPが使用されています。シート上のCFRPをコンクリート製の橋脚に巻きつけることで、耐震補強ができます。鋼製の橋梁で、腐食で欠損が生じた部分にCFRPを接着することで、橋ができた時の性能まで回復させることも可能です。
FRPの将来性
技術的にはFRPで大きな橋を造ることも可能ですが、1本の橋を丸ごとFRPで造るのは、材料コストがかかりすぎる場合があります。小規模な歩道橋は幾つか架けられていますが、実用として現在考えられているのは、補強材としての使用のほか、橋の検査路をFRPで造るというものです。検査路とは、橋に近づいて目視で点検するために、橋に取り付けられる、検査員のための通路ですが、そうした構造物ならFRPが向いていると考えられています。コンクリートや鋼鉄と組み合わせて使うことのできるFRPは、今後も橋の材料のひとつとして、可能性を秘めているといえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 都市基盤環境学科 准教授 中村 一史 先生
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