19世紀末フランスに見る、社会と文化の関係

19世紀末フランスに見る、社会と文化の関係

社会との関係が文化を生む

18世紀の半ば、イギリスでは産業革命が起き、ヨーロッパを中心に大量生産・大量消費の時代が到来しました。一方で急速な科学技術の発展や、アジアやアフリカ諸国に対する植民地支配という社会体制が進む中、それに対する反発も生まれ、それが文化や芸術にも反映されはじめます。19世紀の末には「アヴァンギャルド」と呼ばれる前衛芸術やデカダンス(虚無的・退廃的芸術)が登場しました。1889年に建てられたパリのエッフェル塔も、当時の技術の粋を集めた建築物として有名ですが、実はデザイン自体はアール・ヌーヴォー(新しい芸術)調で、むしろ退廃的な様式であると言えます。

変化のスピードは速い

19世紀後半のフランスで、「印象派」と呼ばれる芸術運動が生まれました。今ではおなじみの画家・モネもその一人です。当時の主流派からは「奇抜な絵」と評されていたのですが、わずか100年ほどでこれほどポピュラーになるのですから驚きです。
舞台芸術なども、それまでは劇場でしか見ることができませんでした。しかし録音や映画の技術が生まれたので、いつでも、どこでも芸術に触れることのできる時代が訪れたのです。
社会とともに文化や芸術の世界も著しく変化を遂げる点は、いつの時代も共通しています。

現代は19世紀末と似ている?

現代の自動車の原型が誕生したのも19世紀後半のことです。鉄道から自動車へと移動手段が変わったことで、人々の時間に対する感覚も変わっていきました。そうした中、1914年には第一次世界対戦が勃発しました。それまで貴族が中心だったヨーロッパ文化は、大戦以降、徐々に民衆のものになっていきます。
そして21世紀の今、ネット上では電子書籍などの新しいメディアが登場しました。アメリカを中心とする単純なグローバリゼーション(世界化)に疑問を持つ人々も増え、文化・芸術面で19世紀と似た状況だと言えるでしょう。将来、過去を振り返って、「20世紀末から21世紀初頭は大きな革命の時代だった」と言われる日が来るかもしれません。

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先生情報 / 大学情報

愛知県立大学 外国語学部 ヨーロッパ学科 フランス語圏専攻 准教授 原 潮巳 先生

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外国文学、教養学、芸術学、国際関係学

メッセージ

「外国語」と聞くと一般的には英語を思い浮かべがちですが、世の中にはじつに多くの言語があり、それぞれの国に文化があります。例えばフランス人は芸術への関心が高い人が多く、映画館では失業者割引まであったり、無料のコンサートなども頻繁に開かれています。「言語圏」という基準で世界を見れば、まだまだあなたの知らない世界があるはずです。学生時代はもちろん、社会に出てからも、一面的にモノをとらえるのでなく、さまざまな情報を収集し、それを多彩な角度から眺めてみる、そんな姿勢を養ってほしいと思います。

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