学習時の視線や脳活動のデータを手がかりに指導法を考える

学習時の視線や脳活動のデータを手がかりに指導法を考える

「問題をよく読みなさい」は間違っている!?

授業やテストで出題された問題の解答を間違えた時に、教師に「問題をよく読みなさい」と言われた経験はありませんか? 生徒が解答を間違える原因は、果たして問題の文章を熟読していなかったからでしょうか? このような誤答の原因や解答までの思考は、最新の生体情報のテクノロジーを活用して、生徒が問題を解く際の視線や脳内を流れるヘモグロビンといった生体情報を分析することで、解明することができます。

正答する生徒と誤答する生徒の視線は異なる

視線の動きと生徒の思考の結びつきを取り上げてみましょう。「視線計測装置」を装着することによって、1秒ごとに生徒が問題のどの部分に注目しているのかを正確に把握することができます。この装置を活用することで、問題の難易度によって生徒の視線は変化することがわかりました。
例えば、算数・数学の問題文に、正しい答えには関係のない数値や文章が挿入されていた場合、生徒はその部分を何度も読み直していることや、正解する生徒はその数値に注目する時間が短いことが明らかになりました。教師は生徒が問題を熟読していないと決めつけるのではなく、生徒がつまずきやすい部分を把握し、適切な指導をすることが重要です。

計算が得意な生徒の頭の中をのぞいてみよう

次に、脳科学の視点から指導法を見てみましょう。あなたの周りには、そろばん教室に通っていて算数や数学で際立った成績を収めていた友人がいませんか? 研究者もそのような特異な才能を持った子どもたちの思考メカニズムには興味を持っています。計算時の彼らの脳活動を調べると、「視覚情報を処理する部分」が活性化しているのか、「論理をつかさどる部分」が活性化しているのかを判断できます。
このように、生体情報には指導法の教育効果を科学的に裏付ける根拠や新たな指導法につながるヒントがあふれているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都教育大学 教育学部 数学科 教授 黒田 恭史 先生

京都教育大学 教育学部 数学科 教授 黒田 恭史 先生

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教育学、数学、人間科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

算数・数学教育と生体情報を組み合わせることで、教師の適切な指導法を研究しています。
私が学生の時には視線や脳活動などの生体情報を容易に集めるための装置はありませんでしたが、近年の目覚ましい技術発展にともなって、生体情報を計測する装置の開発が進められてきました。現在では、病気の患者さんだけでなく、子どもも含めてあらゆる人々に使用できる簡易で、安価な装置が開発され、教育学にも応用されています。これらの技術を活用して「新しい学習科学」の世界を一緒に探究しましょう。

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京都教育大学は、優れた教員を養成するため、教科と教職に関する知識と技能、それらを基盤として教育実践のさまざまな課題に対処するための思考力・判断力・表現力などの能力を育成し、教育の現場において主体的に仲間と協働して課題を解決しようとする態度を養います。このような教育と学生一人ひとりへのきめ細かい指導を通して、子どもの成長する過程に関わることに大きな喜びを感じ、人間の成長と社会の発展における教育の役割を理解して、自ら研鑽を続ける教員を養成します。