自分で考える練習が効果的! スポーツ上達に関わる心理学

勉強も運動も「自己調整」
学業の成績が高い子は、「Plan(計画)・Do(遂行)・See(評価)」の学習サイクルを、自分で考え、自分で調整してうまく回していることがわかっています。この「自己調整学習」という理論は、勉強に限らずスポーツの上達にも効果的だという研究が、スポーツ心理学の領域で進んでいます。
さまざまな競技の選手を対象にしたアンケート調査が主に行われており、練習前にどれくらい計画を立てているかなどを質問して得点化しています。その調査では競技力が高い選手ほど、計画や実行など各段階で、よく自分で考え、工夫しているという結果が出ています。
「選択」でやる気アップ?
自己調整学習は、その名の通り「自分に合うように調整すること」が最も大事であり、やり方は共通ではありません。目標を立てたことでやる気になり、練習に身が入るようになるかどうかがポイントであり、やらないことでやる気が出るなら、休む日を設けるのも一つの方法なのです。
やる気のある人とない人では、同じ練習をさせない方が良いという研究データも出ています。例えば、練習時に使う道具の色や、部屋に飾る絵画の種類を選ばせる実験をした結果、成績が上がった選手がいました。選択を「ご褒美」と感じてやる気につながったのですが、これはやる気がなかった人のケースです。普段からやる気を持って自分で選んでいる人は、「選ばされた」と受け止めて逆効果になりました。ここからも、自分に合った方法はさまざまであり、それをいかに見つけるかが各段階で重要と言えそうです。
現場での活用をめざして
自己調整学習は選手が1人で行うのではなく、他者からの助けやアドバイスを受けることで可能になっていくものであり、選手、指導者の双方にニーズがある研究です。将来的には、伸び悩んでいる人への指導法に還元されることが期待されています。実際に競技力向上につながるかという因果関係の検証を進めながら、社会実装をめざしていくことになります。
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先生情報 / 大学情報

鹿屋体育大学体育学部 講師幾留 沙智 先生
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