急速に広がる「衛星データ」の利用
暮らしに不可欠な人工衛星からのデータ
天気予報、衛星テレビ、携帯電話やカーナビの位置情報(GPS機能)に人工衛星からのデータが使われているのはよく知られています。ほかにも、森林減少や海面温度などの地球観測、災害や作物の生育調査にも利用されています。人工衛星とそのデータは、私たちの生活に不可欠なものとして、「宇宙インフラ」と呼ばれています。その進歩は著しく、小型衛星やセンサ技術、データ処理技術の開発によって、その利用範囲はさらに広がっています。
小型衛星の利用で大量データ取得が可能に
小型衛星の開発は、より安価に多くの人工衛星を打ち上げることを可能にしました。その結果、データ量が増え、高い精度要求に応えられるようになっています。例えば、現在のカーナビはGPSを利用し、誤差は5~10m程度の精度で十分です。
ところが、自動車の自動走行では数センチ程度の精度が必要になります。これには多くの測位衛星が必要になります。また、衛星画像は、今までデータの観測頻度が限られていましたが、人工衛星の増加や技術力の向上で、より高い頻度でのデータ取得が可能になりました。地震のような災害の被害調査にも十分使えるようになったのです。
データサイエンスの進歩で人工衛星はより身近に
一方で、衛星データの種類や量が膨大になった結果、その時系列変化を自動抽出する技術が開発されています。データの2次利用も進んでいます。例えば、気象衛星のデータでは局所的な大雨は把握できませんが、地上のセンサから得られる情報を重ねると、精度の高い気象情報が得られます。また、ビックデータ技術を使うことで、新しい「事実」も発見されています。例えば、大量データの解析で、エルニーニョ現象と中国の黄砂に相関関係があることがわかってきました。このようなデータサイエンスの進歩は、衛星データを暮らしに結びつける新たな領域を開拓することも期待されています。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 工学部 循環環境工学科 准教授 長井 正彦 先生
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