さまざまな顔をもつ街・東京

さまざまな顔をもつ街・東京

ひと口では言い表せない都市の多様性

東京都内には23区と市町村が存在しますが、これらは行政上の区分だけでなく、地域の歴史やどのような人々が住んでいるかによって、23区内でも特性や性格の違いがあります。例えば、「下町」と「山の手」といった地域区分が有効でしたが、今はとてもこの2区分だけでは把握することはできません。都心のようなビジネス地域が存在しますし、加えて周辺地域には一般住宅地が存在します。ほかに工業地域や商業地域なども多様な特徴を持っているため、東京をひと言で特徴づけるのは難しいのです。

地域ごとの特徴と変化

品川区と大田区は古くから電気・通信系の工場が多く、それを基に発展しました。円高やグローバル化の脅威にさらされ、現在は衰退傾向にありますが、それでもまだ残っています。一方、西部の世田谷区や練馬区、東部の足立区は周辺住宅地ですが、同じ周辺住宅地でも、足立区は雑居型でブルーカラー率が高いといった特徴があります。池袋、新宿などの都心に隣接する住宅地では、高度経済成長期には若者が手狭なアパートに住んでいました。しかし、1980年頃からは外国人が住むようになり、現在はそれが周辺部に広がり、足立区や世田谷区も外国人居住者が増えています。

地域ごとの課題と取り組み

そうした中、各自治体は独自の取り組みを行っています。例えば足立区は、外国人問題や安心・安全対策に積極的です。また下町の各区によって、23区内でも住宅は密集しているため、道路も狭く、以前から災害時の危険が指摘されていました。しかし下町には独自のネットワーク、生活ルールが形成されているため、コミュニティを壊すことなく、部分的修復をしようという試みが行われています。住宅が急増している港区では居住支援に、大田区は産業支援に力を入れるようになりました。各自治体は多様な政策を行っていて、その政策には各地域がかかえている問題が反映されてもいるのです。このように、大都市東京はさまざまな顔をもっています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東京都立大学 都市環境学部 都市政策科学科 教授 和田 清美 先生

東京都立大学 都市環境学部 都市政策科学科 教授 和田 清美 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

都市社会学

メッセージ

親と同居している間は、子どもは守られている意識がまだ強いと思います。しかし、親から独立し、社会に出たら、何もかも自分でやらなければなりません。そうなったときに必要なのが予期しなかった変化や事態が生じても、やり通せる力です。特にこれだけ変化が激しく、先行き不透明な現代社会では、他人と競争して勝ち抜けるというよりも、一つのことを継続してやりつづける力が大事なのです。社会の動きに対してアンテナを張り、あなた自身の力を磨き上げ、生きる力を身につけてほしいと思います。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。