「みんなと一緒」がプラスにもマイナスにも働く 集団心理って?
防災の現場での「集団心理」
個人ではやらないのにグループでいるとついやってしまうという心理や行動のことを、心理学の世界では「グループ・ダイナミックス(集団力学)」と呼びます。これは災害の現場でもあり、洪水が迫り、危険なことは理解しているのに周囲が逃げないのでその場にとどまってしまう、というケースがあります。逆に、地震による被害が起きても、地域の住民やボランティアと協力することで復興に向かっていくケースもあります。集団の心理を研究することは、防災対策にもつながります。
一部の声が「事実」として広まる
昔から、災害が起こると人々の不安をあおるようなうその情報が広がることがあります。また、ニュースやSNSで「災害が起きた直後に被災地に行くと逆に迷惑がかかる」といった意見が流れて、被災地に人手が足りなくなるケースも増えています。被災地のエリアや被災状況によってはそうした意見が事実の場合もありますが、人手を必要としている地域も確実に存在します。一部の人の意見が世間の声や事実のように勘違いされてしまうケースも、集団心理が悪く働いた形といえます。ある話が「広まっている」ことと「事実なのか」ということとを区別することが重要です。
仮設住宅のイベントが人を救う?
集団の存在が良い方向に働いたケースもあります。2011年に発生した東日本大震災の被災地では、仮設住宅で毎週のように被災者が参加するイベントがありました。頻繁に開催されるため「イベントが多いと被災者も疲れるのではないか」「地域を取りまとめるリーダーが大変では」という意見もありましたが、被災者にとっての楽しみでもありました。災害で生き残ってしまったことで自分を責めて苦しむ人や頼れる人がおらず自ら命を絶つ人もいます。誰でも参加できるイベントがあれば、一時でも寂しさから離れてにぎやかな「集団」の中に身を置くことができます。毎週のように行われるイベントは、被災者の孤独や苦しみを一時でも忘れさせて、孤独死や自殺を防ぐ効果もあったのです。
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先生情報 / 大学情報
福知山公立大学 地域経営学部 地域経営学科 准教授 大門 大朗 先生
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