「光線」の集まりで自然な3D映像を実現する

「光線」の集まりで自然な3D映像を実現する

3Dの原理とその本質

3D映画は右目と左目に少し違う映像を見せることで立体感を出しますが、3D映像の本質は「視点の位置が変われば見え方が変わる」ことであり、右目と左目で見え方が違うことはその一面に過ぎず、それだけでは不自然です。VR(バーチャルリアリティ)に使うヘッドマウントディスプレイでは頭の動きに合わせたCG画像を合成することで見え方の変化まで再現しますが、装着が必要です。もっと手軽に自然な3D映像を見るにはどうしたらいいでしょうか?
一般的なテレビはどの方向から見ても同じ映像が見えますが、これは画面上からはどの方向にも同じ色の光が出ているからです。例えば赤い点は赤い光を四方八方に出しているのでどこから見ても赤く見えます。もし方向によって違う色の「光線」を出せる特別な点を作れば、その点は見る方向によって違う色に見えるはずです。そのような点で画面を埋め尽くせば、見る方向によって違う画像を見せることができるようになり、何も着けずに自然な3D映像が見られます。

今の1万倍の画素数が必要!?

しかし、この方法で3Dを表示するには細かな方向ごとに別々の色の光線を出す必要があるので、表示素子に現在の1万倍程度の画素数が必要だと言われています。そのため現在、裸眼3Dディスプレイの多くは解像度が犠牲になっています。性能不足を補うための案として、LEDなどの高速な表示素子を使い、人間にわからない速さで切り替えることで一つの画素にたくさんの役割をさせる方法が考えられています。

ARで展示・広告、手術のサポート

AR(拡張現実)では実際の風景にCGなどを重ねて表示します。現在は主にシースルーのヘッドマウントディスプレイを使いますが、裸眼で見るための透明な3Dディスプレイも研究されています。多くの人が同時に見られるので、商店のショーウィンドウなどの展示・広告、ライブの演出に使うのが効果的です。また、医療への応用として、手術中に患者に重ねてCT画像などを表示し、医師をサポートすることも期待されています。

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先生情報 / 大学情報

長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 電気電子情報工学分野 教授 圓道 知博 先生

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情報通信工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

人間の視覚とは「網膜に投影された2次元画像から3次元空間を把握すること」とも言えます。この2次元画像から3次元情報を得るという考え方はとても重要で、ロボットの視覚や自動車の自動運転もこの考え方が基礎になっています。2次元と3次元の対応は幾何学ですから、幾何学が好きな人にはこの分野はお勧めです。
また3Dディスプレイは電気や情報、光学の分野にまたがっており、専門の学会もなく十分に確立された研究分野とは言えませんが、その分、自由な発想でものづくりをしたい人はやりがいが感じられるでしょう。

先生への質問

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長岡技術科学大学は、大学院に重点を置き、実践的な技術の開発を主眼とした教育研究を行う工学系の大学として、新構想のもとに設置され、実践的・創造的な能力を備えた国際的に通用する指導的技術者・研究者の養成を行い、これらを通じて社会との連携を図ることを基本理念としています。
大学はまた、勉学の場であると同時に人間形成の場でもあります。美しい豊かな自然に恵まれた環境と、国内はもとより世界の各地から集う学生たちが豊かな人間性を養い、創造性とチャレンジ精神を求め、友情を育む潤いのある大学生活の場があります。