こんがらがった結び目の正体は? 結び目の性質を考える数学
コーヒーカップとドーナツの関係
「柔らかい幾何学」と呼ばれるトポロジー(位相幾何学)の分野では、取っ手のついたコーヒーカップの表面とドーナツの表面は同じものだという見方をします。コーヒーカップの取っ手の部分を切ったり貼ったりすることなく連続的に大きくしていくと、ドーナツと同じ輪の形になるためです。同様に、トポロジーでは三角形も円も同じだという考え方をします。
トポロジーの一分野に「結び目理論」があります。結び目理論では、三次元空間で両端をつなげた輪っか状のひもの結び目について考えます。
結び目理論とは
見た目が違ういくつかの結び目があったとして、それらを切ったりつないだりせず連続的に変形させて同じ形になるなら、それらは同じ結び目です。反対に、2つの結び目が違うものであるということをどのように判別するかを考えるのが、結び目理論の研究の1つです。結び目を判別するためには、結び目を連続的に変形させても変わらない「不変量」という数学的な量を考えます。同じ結び目は同じ不変量を持つということです。
三次元空間にある一次元の結び目を考えるときには、平面に射影した「図式」を使います。平面の図式には結び目の交点が現れますが、交点の数の最小値は不変量の一例です。この最小値をどのように決定するのか調べられています。
一次元の結び目から二次元の結び目へ
一次元の結び目を、ある軸を設けて時間変化(四次元)で動かし、元の位置に戻ったところで像をつなぎ合わせると、「曲面結び目」という二次元の結び目ができます。曲面結び目を考えるときには、四次元から三次元空間へ射影し、さらにxy平面で輪切りにします。そうすることで、z軸方向に一次元の図式が時間変化ごとに現れるので、一次元に落とし込んで考えることができます。曲面結び目では、3つの線が交わる三重点の個数が不変量の一例として考えられます。
一次元の結び目に比べ二次元の曲面結び目はまだわからないことが多いため、研究が進められています。
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