制約があるから、おもしろくなる! 商業アニメーションの世界
危機に瀕する日本のアニメーション業界
アニメーションと聞いて、最近の若い世代では30分のテレビアニメや2時間のアニメ映画ではなく、動画配信サービスのYouTubeやTikTokで見られるようなショートアニメをイメージする人も多いようです。個人のクリエイターに憧れる人が増えていて、日本のアニメ業界に就職したいという人は減っています。制作の一部を海外に発注することになり、日本国内では絵を描くスキルを持つ人が育たない、「作り手の空洞化」が起きています。
アニメ30分に100人が関わる
日本の商業アニメは世界に誇る文化であり、ヒットを狙って仕掛けるビジネスでもあります。30分のテレビアニメ1本の制作に約100人が関わり、予算やスケジュールの制約もあるだけに、自分の作りたいものを自由に作れるわけではありません。しかし制約があるからこそ、いらないものがそぎ落とされた良作が生まれます。関係者の相互作用で思いもよらないアイデアが飛び出して、生きているかのように物語が動き出すこともあります。
作品を作るうえでは、まず「誰に向けて作品を作るのか」すなわちターゲットを決めることが重要です。幼児向けなら緻密な作画よりも『アンパンマン』のようにシンプルな絵のほうが情報を処理しやすいなど、ターゲットを絞ることで絵柄やストーリーが決まっていきます。
ブルー・オーシャンを探して
ショート動画に慣れた若い世代からは、「結末の分からない物語に時間を取られたくない」という声も聞かれます。一方、YouTubeで毎日配信される1~2分のショートアニメから、劇場版につながるケースも出てきました。『君の名は。』などのヒット作で知られる新海誠監督も、個人でコツコツと作品を発表していた経歴の持ち主です。100年以上の歴史がある商業アニメのノウハウを生かしながら、もっと身軽な作品作りの枠組みを模索することで、作り手不足の改善や、商業アニメのブルー・オーシャン(新領域)が見つかるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
大正大学 表現学部 メディア表現学科 教授 中山 浩太郎 先生
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