制御技術で「落ちない飛行機」や「鳥のような飛行機」を造る

制御技術で「落ちない飛行機」や「鳥のような飛行機」を造る

「落ちない飛行機」を実現する制御技術

航空機の増加、「空飛ぶクルマ」の構想やドローンの利用の拡大などで、今後、空の事故が増えることが懸念されています。空の安全確保のため、さまざまな技術開発や法整備が進められていますが、「飛行制御技術」の分野では「落ちない飛行機」の研究が行われています。
これは、飛行中に何らかの理由で舵(かじ)が利かなくなるなどの故障が起きても、残された機能を使って飛行を続け、安全な場所に緊急着陸させるような制御技術を開発するものです。翼の一部脱落など重大な欠陥が生じると飛行の継続は難しくなりますが、制御の力で飛行機の性能を目いっぱい引き出して、安全を確保しようとしています。

パイロットの負担を減らして操縦を最適化

現状では、自動操縦で飛んでいる飛行機が想定外の事態に遭遇したときは、自動操縦システムをオフにし、パイロットの操縦で緊急処置を行います。このとき、パイロットの判断や技量によっては、より深刻な事態を引き起こす恐れがあります。そのため、不具合の生じている機体を自動で緊急着陸させる「知的な誘導制御」ができるようになれば、パイロットに頼ることなく安全に飛行を続けられます。人工知能(AI)を活用して、飛行方法や緊急時の対処法を機体に搭載したコンピュータが自ら学習し、最適な飛行制御をする方法が研究されています。

鳥や昆虫と同じように飛ぶ

センサー技術が発展し、機体にかかる圧力や気流の状況を時々刻々感知できるようになれば、制御に役立つ情報が今よりもっと細かく得られるようになります。飛行中の機体がこれから遭遇する事象を予測し、事前に適切な制御ができれば、「落ちない飛行機」や「揺れない飛行機」が可能になるはずです。また飛行機の昇降舵・方向舵・補助翼などの舵面(だめん)を細分化し、姿勢制御に自由度が増せば、その都度、気流の状況に合う最適な飛行もできるでしょう。航空機制御の研究が進めば、将来、飛行機は鳥や昆虫と同じような感覚で、空を自在に安全に飛べるかもしれないのです。

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東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 土屋 武司 先生

東京大学 工学部 航空宇宙工学科 教授 土屋 武司 先生

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航空宇宙工学

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大学に入るまでに好きなことを見つけ、進路を決めてください。あなたが本当に好きなことであれば、苦手なことも得意になり、どのような困難も克服できるはずです。これからは不透明な時代だからこそ、自分の好きなことを突き詰める強さが価値を持ちます。
航空宇宙工学は、さまざまな分野の基礎を横断的に学んだうえに成り立つ総合工学です。基礎をコツコツと積み重ね、自分の専門とするところは、とことん突き抜けるぐらいの熱心さで勉強に取り組んでいってください。

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