栽培時の温度調整を効率化! ヒートポンプで支える作物生産

栽培時の温度調整を効率化! ヒートポンプで支える作物生産

培地に限定して温度調節を行う

ビニールハウス内で作物栽培が行われる際、「ヒートポンプ」と呼ばれる、空気中の熱を集めて空調などに使う装置が多く用いられています。通常はハウス内全体の空調を行いますが、近年さらに効率の良い、培地(作物を植えた土壌)だけを温度調節するシステムが開発されました。これは培地の下にヒートポンプとつながるチューブ状のものを配置して、土の部分だけを温めたり冷やしたりするというものです。この機能を活用して、栽培している作物に合った温度調節を実現し、生産性と品質の向上をめざしているのです。

期待される多様なメリット

このシステムの開発研究はイチゴの栽培で行われましたが、別の作物でも利用可能です。加えて全国どこでも使えるため、さまざまな作物の安定した生産に役立つと言えるでしょう。それにより、生産者の収益向上につながる、生産者数が増加する、地域産業が活性化するなどの効果も見込めます。
開発されたヒートポンプのシステムは、今後、機械そのものの機能を高めて、さらに効率的、効果的な熱伝導を実現していくための研究が引き続き実施されていきます。

AI+農業で生まれる効果

このシステムは、AIの活用も視野に入れられています。現状、システムの温度調節はリモコンを使って人間の手で行われていますが、そこにAIを導入することで、外気温に対して、どの程度の消費電力でヒートポンプを回せばいいかが計算できるようになります。AIと作物栽培を組み合わせたこの研究は、これから本格化して、システムとして正常に動作するか、思った通りの効果が出せるかなど、実験を繰り返していくことになります。
最近は地球温暖化の影響もあり、日本でも夏の暑さが厳しくなってきています。そこで作物を栽培するには、温度のコントロールは非常に重要な意味を持ちます。生産者の知見と新しい技術をうまく合致させることで、今後はより効率的な生産が可能になると期待されています。

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弘前大学 農学生命科学部 地域環境工学科 准教授 森谷 慈宙 先生

弘前大学農学生命科学部 地域環境工学科 准教授森谷 慈宙 先生

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メッセージ

昨今AIについての関心は高く、AIを学びたいという高校生も多いと思います。ただ、もしあなたがAIに興味を持っているなら、それを使って何をするかまで考えたことがあるでしょうか。私は、「AI+興味のあるもの」というように、並行して知識を深めていくことをお勧めしたいです。大学における研究では、複数の知見の組み合わせで新しい何かを探究していくことが多いです。加えてそこではチャレンジも求められます。研究には失敗がつきものですから、それを乗り越えられる力をぜひ身につけましょう。

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