過酷な環境を乗り越える建築の工夫
建築物にとって厳しい条件
日本は地震が非常に多く、台風による風の影響も大きいことから、建築にとっては非常に過酷な環境です。しかし、このような条件下でも、デザインの美しさや安全性の確保、快適性に優れた建築を実現させるために、構造面からの研究が進められています。
新しい構造の考案
建築物は、高層になるほど地震や風の影響が大きくなります。ただし、建物を強固にするために柱や梁(はり)を太くすると、居住空間が狭く暮らしにくくなる問題が生じます。そこで、室内に柱や梁を出さずに安全な高層ビルを建設するための構造が考案されました。一般的な建築は、均等に柱を立てて梁をかけ、そこに床を設置して複数階を構成します。それに対して考案された構造は、建物全体を大きな1階建てとみなして、最上階だけに梁を設置します。そして、中央の大柱で重量を支え、各階の床を大柱と外壁でがっちりと支えることで、柱のない広々とした空間を実現させました。
また、地震や風の揺れに対処するための仕組みも取り入れられています。例えば、道路を走る時の衝撃を和らげるために自動車の車体とタイヤの間にバネが設置されているように、建築においてもゴムなどの制振装置を取り入れて振動を緩和しています。
プレストレスコンクリート
建築物の材料の工夫も構造と同様に重要です。コンクリートは押しつぶす圧縮力に対しては強い材料ですが、引っ張られる力に対しては弱く、亀裂を生じて損壊することがあります。そこで、あらかじめ内部に圧縮力を加え、引っ張る力を相殺するプレストレスコンクリートの導入が進んでいます。プレストレスコンクリートの建物は阪神・淡路大震災でも損害が少なく、地震への強さが証明されています。将来的には、工場でプレストレスコンクリートの部材を生産し、現場に運んで組み上げるだけで、安全が確保された建築ができるかもしれません。こうした技術は、建物の安全性だけでなく、建設業界の人材不足の課題も同時に解決できると期待されています。
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先生情報 / 大学情報
静岡理工科大学 理工学部 建築学科 教授 丸田 誠 先生
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先生への質問
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