地域を元気にする交通まちづくりのデザイン
公共交通に関する新たな研究
バス、鉄道など公共交通のネットワークをどのように構築したら、より快適なまちになるのかという研究、いわば「まちづくり」の観点から公共交通をデザインする研究が、21世紀に入ったころから、日本でも本格的になってきました。それまでの交通へのアプローチは、交通渋滞や電車のラッシュアワーをどう改善するかなどが主だったのです。
まち全体をバスターミナルに
公共交通のデザインがまちの活性化につながった例の1つに、青森県八戸市の実践があります。八戸市には、昔から中心街を拠点とした充実したバス路線がありました。しかし、中心街の道路幅が狭く、また一方通行が多くあり、バスの停留所がわかりにくいという欠点も指摘されていました。そこで、バスの停留所を1つの建物に集めたバスターミナルを建設することで、それまでの欠点を改善する構想が浮上します。しかし、その案ではバスの利用者はターミナルの建物に集中し、まちなかを歩く人が減ってしまう懸念がありました。そこで、「まち全体をバスターミナルにする」という計画が立てられました。バス会社、行政などが協力して、複雑だった中心街の運行経路を整理したうえで、停留所の位置を工夫し、バス会社ごとに違っていた定期券の販売所を集約するなど、さまざまな施策を行ったのです。
より快適なまちづくりと公共交通
地方都市では、人口減少とマイカーの普及によって、公共交通の利用者が減り、運賃の値上げや路線の縮小を余儀なくされ、さらに利用が減る悪循環で、まちも衰退してしまう例は少なくありません。ところが八戸市は、「まち全体をバスターミナルにする」という施策のほか、中心街から10分おきに運行するバスの整備や運賃値下げなどにより、バス利用者は増え、公共交通が便利な場所に店ができるなど、まちの活性化に貢献しています。このように、交通デザインとまちづくりには密接な関係があります。交通のあり方について、研究と実践を積み重ねることで、快適なまちづくりに貢献することができるのです。
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先生情報 / 大学情報
福島大学 経済経営学類 教授 吉田 樹 先生
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