ジェンダー平等の課題とは? 20世紀イギリスの歴史から考える
ジェンダー問題の背景は?
現代は多くの国々で、権利や機会を男女平等に与えることが定められています。しかし結果としては男女の所得などに格差が生じており、ジェンダー平等はまだ実現しているとはいえません。世界の歴史を見ると、男性優位の領域を社会で保持するために、さまざまな形で女性に制限が課されていたことがわかります。
軍隊と女性の関わり
第一次世界大戦や第二次世界大戦中のイギリスでは、男性の多くが兵士になり、労働力不足を補うために女性が働く職種が広がりました。重工業や化学など「男の仕事」といわれていた分野の一部に女性たちが進出したものの、仕事内容や賃金などに制約が設けられ、ジェンダー格差は維持されました。男性は戦後に職がなくなることを不安に思い、女性が活躍する場を限定していたのです。
軍隊で働く女性にも「武器を持ってはいけない」など制限が課せられました。軍隊は戦時中に最も「男らしい」とされていた職で、女性と男性の仕事の境界線が明確に引かれていたのです。ジェンダー格差は長い間意図的に維持されてきたため、現代社会にも残っていると考えられています。
戦争のジェンダー史
戦争における女性の歴史は、正統な歴史とは別に扱われることが多いです。イギリスの戦争博物館には、大戦期からすでに女性と戦争の関わりを描いた展示が存在していました。女性たちの思いを後世に伝える画期的な取り組みだったといえますが、女性を「特集」として括ることは、正史からの除外も意味しています。例えば陸軍に所属した女性の働きは女性史として別枠に入れられ、陸軍は男性のみで戦ったように描かれたのです。
また、男性の戦争史は兵士の目線で語られることが多いですが、イギリスにも兵士以外の男性がたくさんいました。正統な歴史から除外されたのは女性だけではないのです。現代のジェンダー問題でも、立場の弱い男性に手を差し伸べることが求められています。語られていない歴史を探ることは、これまで社会が目を向けなかった存在を可視化する手段のひとつだと考えられています。
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奈良女子大学 生活環境学部 文化情報学科 教授 林田 敏子 先生
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