作物の遺伝資源の可能性を引き出し、未来につなぐ研究を!

作物の遺伝資源の可能性を引き出し、未来につなぐ研究を!

植物の研究を通じて国際貢献

米は最も身近な食材で、イネのルーツをさかのぼると、インド東部から中国にかけての地域が原産とされる「アジアイネ」と、アフリカ西部が原産の「アフリカイネ」が原種と考えられています。東南アジアやアフリカの一部にも、昔から米を主食にしている国が複数あり、それら開発途上国でイネの栽培技術を高度化することができれば、そこに暮らす人々の生活水準も向上させられるかもしれません。「熱帯作物学」は、農産物の生産性向上や、高付加価値なものを作り出す研究を通じて、国際貢献の役割も果たしているのです。

茎から栽培することで2カ月早く収穫可能に

アジアイネからは、食用に適した食味のよい米が収穫できます。安定的かつ効率的に生産性を向上させる方法として「二期作」がありますが、高温多雨な熱帯地域でイネの栽培が可能なのは、年間8~9カ月間ほどです。種をまいて5カ月ほどで収穫し、すぐに二期目の種をまいても、生育の途中で乾期に入るため、イネは水不足で枯れてしまいます。そこで、アジアイネの中から多年生の品種を選び、「切り株」を残した状態で一期目を収穫し、その後、茎から栽培を行うことで、再生二期目は約3カ月で収穫でき、8~9カ月間で二期作が行え、生産量の増大に貢献しています。

熱帯作物を「高付加価値食品」にできるかも

一方のアフリカイネは米粒が赤黒く、食味はあまりよくありません。ただ、赤黒い「ぬか層」には、健康によいと言われるポリフェノールが多量に含まれることがわかっており、そのほかの有用な成分も含まれているかどうか調べています。また、トウガラシの環境調和型栽培方法の開発や高機能性成分の探索も行っています。
これらの研究の一部は、経過観察などを現地の大学や研究機関に委託して行うので、技術やノウハウはその国の知的財産となるでしょう。イネに限らず、さまざまな熱帯性作物の可能性を引き出し、その地域の農業の発展に貢献するのが、熱帯作物学の役割と言えます。

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先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 農学部 農学科 植物資源科学プログラム 熱帯作物学 教授 坂上 潤一 先生

鹿児島大学 農学部 農学科 植物資源科学プログラム 熱帯作物学 教授 坂上 潤一 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

熱帯作物学、資源植物学

先生が目指すSDGs

メッセージ

全世界の人口は2013年でおよそ71億人ですが、2050年には約90億人まで増加すると見られています。そうなると、最初に問題になるのは食糧不足です。食糧危機を乗り越えるために、今、何をすべきか、あなたにもぜひ考えてもらいたい問題です。
さらに、あなたが大学生となり、社会人となる頃には、グローバル化がさらに進んでいるでしょう。その流れに対応するため、自分の身の回りのことばかりでなく、海外の動きや文化についても、高校生のうちから関心を持ってもらいたいと思います。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

鹿児島大学に関心を持ったあなたは

鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。