宇宙エレベータに乗って宇宙から地球を眺めよう
宇宙まで昇れるエレベータ
地上から宇宙まで昇れる「宇宙エレベータ」の理論は、100年以上前に提唱され、SFでたびたび扱われてきました。地球の自転と同じ周期で地球のまわりを回っている静止衛星は、地上からは常に同じ位置にあるように見えます。そこで、静止軌道上に打ち上げた物体から地上にケーブルを伸ばして、地上と宇宙をつなげば容易に宇宙エレベータを建設することができるものと考えられていました。しかし、厳密に検証してみると、それだけでは実現不可能であることがわかりました。
縦に長いと重力は大きくなる
通常の静止衛星は、作用する重力と遠心力がつり合うため地上にも落ちず宇宙にも飛び出しません。したがって宇宙エレベータも、遠心力と重力がつり合うよう地球側と宇宙側に同時にケーブルを伸ばせば、質量中心を静止軌道に保ちながら容易に建設できるものと考えられてきました。しかし、重力は地球の中心から距離の二乗に反比例して作用します。これを厳密に考慮すると、地球側のケーブルにより大きな重力が作用し遠心力とつり合わなくなり、地上まで伸ばす前に墜落してしまうことがわかりました。これに対し、常に推進力を与えて少しずつ上昇させることにより、つり合いを保って静止軌道を維持しながら地上までケーブルを伸展できることを明らかにしました。
宇宙から地球を見る
宇宙エレベータが完成すれば、特殊な訓練も高額な宇宙旅行代金も必要なく、今よりずっと手軽に宇宙空間まで行けるようになります。ロケットを使わずに宇宙空間にさまざまな資材を運ぶこともできるようになりますし、太陽系のほかの惑星にまで容易に宇宙船を飛ばすこともできます。何より、高度約36,000kmの静止軌道から、暗闇の中に青く輝く小さな地球を自分の目で鑑賞することができます。
宇宙エレベータの建設では、ケーブルの素材が最大の課題でしたが、近年のカーボンナノチューブの発見により、その実現の可能性が高まってきました。誰もが宇宙から地球を眺めることのできる時代が近づいているのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 武市 昇 先生
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