バーチャルリアリティーが、人間の身体機能を回復させる
作業療法士の仕事とは
障がい者や高齢者など、特定の作業をこなすことが困難な人に対して、どうすればその作業ができるのかを一緒に考えて、よりよい生活への手助けをするのが、作業療法士の仕事です。訓練によって作業ができるようになるだけでなく、補助的な道具を使って可能にしたり、社会制度へ働きかけるなど、さまざまな方法を模索していく仕事でもあります。
誰でも使えるトイレの開発
私たちはふだん、温水洗浄タイプのトイレを何の苦労もなく使っていますが、高齢者や障がいのある人が使いやすいトイレとはどういうものかを考えていくのも、作業療法士の仕事です。例えば高齢者にとっては、トイレに設置してある各種のボタンに書いてある文字がわかりにくいかもしれません。トイレの照明は少し薄暗いことが多いですが、もっと明るいほうが文字が見やすいかもしれません。さまざまなタイプの障がいが考えられるため、なるべく多くの人が使いやすいように、形や色、器具の角度などまでをも、実験を交えて検証していく必要があります。
バーチャルリアリティーをリハビリに応用
リハビリテーション用の機器にも、最先端の技術が応用されることがあります。例えばバーチャルリアリティーの技術も、障がいの検査や、リハビリのトレーニングに応用することができます。最新のものとしては、実際に物体がないのに物をさわった感触を味わえる、触覚のバーチャルリアリティーを可能とする技術も開発されており、リハビリ用の医療機器として期待されています。また、「パロ」という名のアザラシ型ロボット(独立行政法人産業技術総合研究所 柴田崇徳博士)が開発され、高齢者や自閉症患者などへの癒やし効果が高く評価されていますが、このようなロボットの活用も今後の作業療法の役割として重要だと考えています。
作業療法士とは、対象とする人が「こうありたい」と思う生活の実現をお手伝いする職業です。道具を使った作業療法は、いわば「人」と「物」を結びつけるという大事な仕事でもあるのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 健康福祉学部 作業療法学科 准教授 井上 薫 先生
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作業療法学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?