日本人は、感性をどうとらえたか? 視覚から日本文化を考える
歌も、絵も、藝も、感性の表現様式
前近代日本の人々は、自らの「観る感性」にもとづきながら、さまざまな表現様式を作り上げてきました。それは和歌や絵画だけではなく、作法や先例を厳守した儀礼や芸能など、現在では文学や芸術の一分野とされています。その意味をたどれば当時の人々が抱いていた感性やそこに宿る呪的な世界に出会うことができます。
視力とは、網膜に物の形や像を映すことですが、人の視覚は、その形や像の意味までをとらえてきました。この視覚性は、人の「観る感性」にもとづいています。「視覚文化」とは、一つの形や像から連想的に意味が広がり、それが社会的・文化的なネットワークに連結しながら、さまざまな表現様式を流行させた文化史の問題としてとらえることができます。
視覚のバラエティーとしての「観る感性」
古語に明暗や色彩を表現する語彙が多くみられたように、人は、目に映る形や像を、コトバや色彩、リズムによって表現してきました。それはまさに人々の「観る感性」が視覚のバラエティーを作り、その視覚性に合った表現様式によって、視覚の文化が形成されていたといえるでしょう。このような「観る感性」を前近代的な「視覚文化」のフレームとしてとらえるとすると、江戸時代に登場してくる肉眼+レンズによる科学的な物の見方は、それまでとは異なる近代的な「視覚文化」のフレームとして考えることができます。
日本文化を知ることは、国際理解の手段
グローバルを地域単位でとらえれば、日本は東アジアの一地域です。現在では日本語となっている中国起源の漢語や仏教用語も、起源をたどれば文化のグローバル化を証明しています。同様に人の「観る感性」は、グローバル化によってどのように変化してきたでしょうか。歴史を通じて先祖の文化的眼差しを学ぶ日本文化史は、異文化との交流や摩擦、相違を学ぶことでもあり、実践的な異文化コミュニケーションのツールとしても考えることができます。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 国際教養学部 国際教養学科 教授 松本 郁代 先生
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