人と関わり、衝突の先に生まれる「映画」作りを考える
映画を見る、撮る
映画は1895年に発明されました。以来130年近い年月の中で技術が目覚ましく進歩して、現在はスマートフォンがあれば誰もが映像を撮影できます。しかし「映像を撮影する」ことと「映画を撮る」ことには大きな違いがあります。映画を撮るためには、まずは過去に作られた映画を「見る」ことが不可欠です。そうすることで、その作品ならではの画面作りや演出、芸術的要素をつかむのです。ただし人間の目は、何かを見ているようで実に多くのことを見落としています。画面に表れた要素を見落とさずにしっかり受け取るためには、「見る」訓練を重ねる必要があります。
地域の力を借りる
また、映画作りは一人で完結させることはできません。監督や脚本家、撮影部、録音部、制作部、俳優部など、多くの人が協力することで一つの作品が完成します。映画作りに関わるのは、スタッフやキャストといった専門家ばかりではありません。例えば実際の地域を舞台とした作品の場合、そこに暮らす人たちの力を借りるケースもあります。エキストラとしての出演だけでなく、撮影場所の提供、方言指導や所作の指導など、その地域で暮らして生活する人たちにしかわからないことを教わり、作品に活かしていくのです。それにより、より生き生きとした作品を生み出すことができます。
衝突の先にあるもの
コロナ禍を経て、他人と関わらないライフスタイルが定着しつつありますが、映画作りはその反対で、人との関わりが不可欠です。その過程では、例えばスケジュール通りに進めたい制作部と時間をかけて撮影にこだわりたい監督やカメラマンとで意見が合わない、といった「衝突」は当たり前に起きます。しかし、こうした意見や主張の違いという課題を解決して、さまざまな条件の中でベストな成果を出すことが映画作りの大切なポイントです。またそうして作られた映画こそ、人と人をつなぎ、社会をより豊かにしていく力をもつのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸芸術工科大学 芸術工学部 メディア芸術学科 助教 鶴岡 慧子 先生
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