金融派生商品のリスク管理に役立つ数学の研究とは
リスク管理の指標を計算
株式や債券、FXなどの金融商品は市場の需給関係などさまざまな要因で価格が変動するため、投資にはリスクがともないます。そのリスクを回避するために作られたのが、デリバティブ(金融派生商品)です。このうち「オプション」と呼ばれる取引では、決められた期日に特定の商品(原資産)を、予め取り決めたルールで売買する権利を取り引きします。オプションの価値は、原資産の価格やボラティリティなどさまざまなパラメータに依存して決まります。
これらのパラメータがオプション価格に与える影響を「グリークス(Greeks)」と呼びます。将来的に、市場の環境変化があってパラメータも変動することで、自分の持っているオプションがどれぐらいの価値になるのかは誰もが知りたいところです。そのため「グリークス」は、リスク管理の指標として使われるのです。
困難な計算に挑む
オプションの中には「バリア・オプション」と呼ばれる特殊なものがあります。これは予め定められた期間内に特定の価格に到達すると権利が消滅(または発生)するもので、株式やFXなど変動の激しい原資産に対してよく発行されます。バリア・オプションのリスクを適切に管理するのに「グリークス」は重要な指標ですが、計算が数学的に困難なため、現在でもさまざまな研究が行われています。バリア・オプションにはいろいろなタイプがありますが、もしどのようなバリア・オプションでも使える「グリークス」の計算方法が解明できれば、証券会社はより自由にバリア・オプションを設計できるようになります。
活発な数理ファイナンス研究
金融の分野における、さまざまな問題を数学的なモデルで解き明かす研究が「数理ファイナンス」です。バリア・オプションの「グリークス」に関する研究もその1つで、証券会社などから高いニーズがあります。研究は確率論をはじめ、ありとあらゆる数学の手法を駆使して行われます。分野融合型の学問でもあるので、新しい課題も次々に生まれており、活発に研究が行われている分野なのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 数理科学科 准教授 石谷 謙介 先生
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