小さな魚の遡上を助ける魚道のリフォーム

小さな魚の遡上を助ける魚道のリフォーム

魚のとおり道「魚道(ぎょどう)」

私たちは河川にダムや堰(せき)などの横断構造物を建設して、取水した水を水道水や農業用水として使っています。これは人間にとっては必要不可欠なものですが、川を遡上(そじょう)する魚にとっては大きな障害となり、上流に行くことができません。そこで、横断構造物の一部に魚が通過できるような、緩い階段状のとおり道である「魚道」が設けられています。

泳ぎの苦手なウキゴリ

川を遡上する魚には、泳ぐのが得意なサケやアユなどの種類もいれば、ハゼの仲間のウキゴリのように普段は川底をはって生活する種類もいます。実際に階段状の魚道に網を入れて魚の通過を調査した結果、ウキゴリは魚道の中に入っても段差をのぼることができず、下流へ流されていることが明らかになりました。水の流れの速さを計測すると、水が段差を流れ落ちる部分で最も速くなり、ウキゴリが段差を乗り越えようとしても、流れに押し戻されてしまうのです。遡上できなかった魚達は、過密状態になり、下流の大きな魚に食べられて生体数を減らすことが心配されます。そのため、生態系保全・生物多様性の観点から、小さな魚でも通過できる魚道の開発が求められています。

魚道をリフォーム

解決策の1つとして、階段状ではなく緩やかな傾斜にする「せせらぎ魚道」があります。これなら、泳ぐ力が弱い魚でも遡上できますが、一方で魚道の距離が長くなり建設コストが高くなるという課題があります。また、既に設けられている魚道をすべて壊して作り変えるのは現実的ではありません。全国にあるたくさんの魚道に適用するには、なるべくコストのかからない、リフォーム程度の工事にとどめる必要があります。そこで、石のような障害物を段の上の部分に取り付けて、局所的に流れを緩める工夫が考案されました。大きな魚が通る部分を残しながら、小さな魚が緩やかな流れの部分を見つけて遡上できるように、端の方に石を設置します。現在は、実験室の中に流れを再現し、魚が遡上しやすい形状の実験・検討がなされている段階です。

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先生情報 / 大学情報

弘前大学 農学生命科学部 地域環境工学科 助教 矢田谷 健一 先生

弘前大学 農学生命科学部 地域環境工学科 助教 矢田谷 健一 先生

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農業水利学、水理学、河川環境工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今、学校で取り組んでいる授業以外に、興味が持てることを探してほしいです。私は高校生の時、自分が何をしたいのかわからず、正直なところ大学に行くかどうかも漠然としていました。そんな時に、犬の散歩で川べりを歩いていると、川がすごく汚いことに気が付きました。これをきれいにして生き物の棲みやすい環境にするためなら、大学で勉強してみたいと思ったのです。自分が一生をかけてやってみたいと思うことは、案外ふとしたところで見つけられます。日常を見回して、”受け身ではない勉強”のきっかけを見つけてください。

先生への質問

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