作品づくりを豊かにし、コミュニケーション力も高まる美術鑑賞学
授業効果も高い学び
美術作品を見てそれを気に入っても、何がどういいのかを言葉で表現することに難しさを感じることがあるでしょう。そのとき役立つのが、「鑑賞」という学びです。
図画工作や美術の授業は作品づくりがメインですが、その途中で自分やまわりの人の作りかけの作品を鑑賞する時間を設けます。そこで互いの意見を伝え合わせると、新しい観点が生まれて作品づくりにより集中できるといった成果もあります。教員は、「何がよかったの?」「どの部分を見てどう感じたの?」などと子どもたちに声がけして意見を引き出していきます。すると、何がどういいと思ったのかといった自分の意見の根拠を含めて、筋道を立てて相手に伝わるように話すコミュニケーション力も養えるのです。
美術以外も対象に
鑑賞は、絵画や彫刻、写真、映画や映像、自然など、あらゆるものが対象です。社会的な事件や美術に関するニュースで意見交換することもあります。幼児なら、砂場の砂もその対象です。手触りや足で踏んだ感覚、匂いなど五感でどう感じるかを引き出します。小学生以上は、ワークショップが中心です。
鑑賞に正解はありません。色や形をじっくり観察して、子どもたちがどう感じるかが基準です。自由な意見交換を通じて、人間関係も構築されます。
鑑賞力は生きる力となる
また、カードゲームで鑑賞力を養うこともあります。美術作品や写真を載せた複数のカードを用意してグループ分けをするのです。人によって人物や風景、色ごとなど、グループの分けかたが異なります。子どもたちはさまざまな分類法があることに気づいて、いろいろな視点を得ていきます。
こうした、鑑賞を通じて養う力は社会人になっても生かせる力です。鑑賞は作品づくりが苦手な人も含めて誰でもできることが魅力です。例えば特別支援教育の場で養った観察力が、子どもたちの生きる力にもなります。
鑑賞を知ると、美術作品に触れたときの体験は全く違うものになります。それが、子どもたちの人生を豊かにしてくれるはずです。
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