講義No.08876 生物学

細胞の死、私たちの健康を守っている!

細胞の死、私たちの健康を守っている!

約3000億個の細胞が毎日生まれ、死んでいる

私たちの体の中では毎日、約3000億個もの細胞が新たに生まれています。これだけ多くの細胞が生まれているのに、体は肥大化を続けるわけではありません。それは毎日、生まれる数と同じくらい多くの細胞が死んでいるからです。
細胞の死に方はさまざまです。寿命で死ぬ細胞もあれば、ほかの細胞に殺される細胞、中にはアポトーシスといって自殺する細胞もあります。では、何のために死ぬのかというと、それは人の健康を守るためです。

細胞が体内秩序を維持するメカニズム

私たちの体は約60兆個の細胞から成り立っています。それはまるで一つの国家や社会のようで、細胞の世界ではいろいろな現象が起こっています。
例えば免疫細胞は、健康に害を及ぼす細胞やがん細胞、微生物などを駆除する役割を担い、体内の秩序を保っています。また、細胞は死ぬ間際に、遺言のような信号を出します。残された細胞は「遺言」に従って分裂することで減った数を補うなどし、何事もなかったように原状回復を果たします。一方、死んだ細胞の死がいは、ほかの細胞が食べて処理します。こうして体の中は、クリーンに保たれているのです。

がん、アルツハイマー病も細胞死が関係している

このように、細胞は影響し合い協力し合って、私たちの健康を守っています。つまり、「細胞の死が人の健康を支えている」と言えるのです。最近の研究では、細胞が死なないと病気になることが明らかになっています。がんはその代表例です。がん細胞は異物であるため、免疫細胞に攻撃されますが、攻撃がきかなかった場合、がんを発症します。逆に、アルツハイマー病などの神経疾患は、細胞の死に過ぎが原因です。つまり、適切なときに適切な細胞が死ぬという奇跡のようなバランスによって、私たちの生命は維持されているのです。
細胞死をコントロールできれば、さまざまな疾患の根本治療も夢ではありません。世界中の研究者は今、そのゴールに向かって研究に打ち込んでいます。

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京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 准教授 川根 公樹 先生

京都産業大学 生命科学部 先端生命科学科 准教授 川根 公樹 先生

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メッセージ

細胞の死は、決して受動的でネガティブなものではありません。それぞれが全体の秩序を保つという役割を“まっとう”するために死んでいるのです。そこに自然の神秘、ドラマを感じます。
研究する上では、ちょっとしたきっかけから仮説や実験方法などのアイデアが生まれます。そのベースは、何に対しても疑問を持ち、掘り下げて考える姿勢にあります。あなたが今、生命科学に興味を持ち、研究してみたいと思っているのなら、ぜひ、いろいろなことに疑問を持ち、考える習慣をつけてほしいと思います。

先生への質問

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京都産業大学は、文系・理系合わせて10学部18学科、約15,000名がひとつのキャンパスで学ぶ総合大学です。この一拠点総合大学の利点を活かし、実社会で活きる高度な専門知識とスキルを養うとともに、学部を超えた知の交流により総合的かつ柔軟な学びを展開しています。各分野の第一線で研究を続ける教員たちから学ぶのは、実社会で強みになる専門知識。大講義だけでなく、対話を重視した少人数クラスや実践的な演習で、次世代を担うに足る「むすんで、うみだす。」力を身に付けていきます。