命のない「物質」の集合体 生き物はどうやって生きている?
物質の集まりである生き物は、なぜ生きている?
当たり前のことですが、人間や動物、植物は生きています。「生きている」とは特別な状態のようですが、よく考えてみると、生き物の体を構成しているのはたんぱく質や水分子などのごく普通の物質です。物質がどのように集まり、連鎖し、機能することによって「生きている」と言える状態になるのか、それを明らかにするのが「生物物理学」という学問です。
街のような、複雑な構造を持つ「細胞」
生き物の最小単位は「細胞」です。そのため、「生きている」という状態に迫るためには、まずは細胞が生きている原理を解明する必要があります。しかし、細胞の構造は想像以上に複雑です。例えば、細胞はゴルジ体やミトコンドリアといった細胞内小器官で構成されています。これらはそれぞれが複雑な形をしている上に、エネルギー源となる物質を使いながら、細胞の形を維持するため絶えず規則的な動きをしています。細胞内小器官はさらに、各々が独立して存在しているのではなく、関連しあって全体で調和をとることで、ひとつの細胞をつくり上げています。その様子は例えるならば、ひとつの「街」と言えるかもしれません。核や小胞体、ゴルジ体などは複雑な構造を持った「建物」であり、それぞれが異なる役割を果たしながら、全体としてひとつの街とも呼べるまとまりをつくっているのです。
「生きているメカニズム」の解明がもたらすもの
研究では、まだ生きている状態を成立させる仕組みや物理法則などは明らかになっていません。ただ、数理モデルによる解析などを通じて、細胞内小器官の中での物質の動きなど、細胞が生きているメカニズムは徐々に理解できる部分も増えてきました。このような研究の進歩は、基礎医学の分野でも薬の開発などに役立っており、細胞の仕組みの全体像が明らかになれば、医学のさらなる進歩にも貢献できるはずです。
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先生情報 / 大学情報
横浜市立大学 理学部 理学科 准教授 立川 正志 先生
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