災害時に人が安全に避難するためにはどうすればいい?
防災意識を高める
地震や台風など自然災害に備えるためには、2つの方向性があります。1つはハード面の対策です。建物を耐震建築にするとか、津波に耐える防波堤を造るというものです。もう1つはソフト面の対策です。これには、社会の仕組みを変えることや、被災者自身が避難行動を起こせるようにするための情報の提供などが含まれます。
大きな災害で人的被害が出たケースでも、きちんと情報を得て適切に避難していれば助かっていたはず、という例がたくさんあります。個人の情報不足や認識不足のために命を失うケースがとても多いのです。災害に対処するため、「防災意識を高める」という言葉を使いますが、人の意識に働きかけるためには、災害時に人がどういう心理でどういう行動をとるか、ということを知らなければなりません。そうした研究を積み重ねることで防災意識を高め、適切な避難を促すための施策ができるのです。
避難訓練の方法は正しいのか?
もともと日本は、地震大国とも言われる自然災害の多い国です。小学校・中学校では、少なくとも1年に1回は避難訓練が行われています。これは、大地震が起きた時にどうすればよいかをシミュレーションする重要な取り組みですが、そのやり方にはまだまだ検討の余地があります。例えば、避難訓練はほとんど教室で授業中に行われるので、地震が起こったら机の下に隠れる、という行動を皆が知っています。しかし、廊下や校庭にいた場合、どのように行動すればいいのかは教えられていません。
災害で犠牲者を出さないために
防災のあり方は、地域によって環境や状況が異なるため、どの地域でもまったく同じ対策をとればいいということはありません。その地域に適した防災のあり方というものがあり、それを地域全体で考えることは、地域のつながりを見直すことにもなるはずです。災害による犠牲者が出ない、災害に強い安全な地域づくりを実現するためにも、災害時の人の心理と行動に関する研究はますます必要とされているのです。
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群馬大学 理工学部 物質・環境類(土木環境プログラム) 教授 金井 昌信 先生
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