健康づくりに必要な「運動の習慣化」とは? 健康支援学の取り組み
難しい「運動」の習慣化
運動が健康づくりに効果があることはわかっていても、習慣化できているかというと、そうでもないのです。厚生労働省が実施する国民健康・栄養調査では、1回30分以上の身体活動を週2回以上実施し、1年間継続している者と定義しています。最新の調査によると、運動習慣者は男性で35%、女性で27%と、決して高いとは言えず、この10年間でほとんど変化していません。
「自分で決める目標」+「励まし」がポイント
では、どうすれば運動を習慣化できるのでしょうか。その方法は2つあります。病気を発症するリスクの高い人を対象に働きかける「ハイリスクアプローチ」と、対象を絞らずに広く働きかける「ポピュレーションアプローチ」です。ここではハイリスクアプローチに取り組む研究の一例を紹介します。
実践の場は病院や自治体が実施する運動教室などですが、支援するスタッフの人数や場所といった制約のほかに、来所する参加者の負担もあるため、少ない回数で効果的に習慣化できる方法が求められます。そこで考えられているのが参加者の「運動への意識と行動の変容を促す」プログラムです。運動だけでなく講義やグループワーク、運動日誌の記入などを組み合わせた方法で、ポイントは目標設定などを「参加者が考えて決める」ことです。それを踏まえて、支援者が励ましなどのサポートを個別に行うのです。
健康な社会づくりにつながる「健康支援学」
このプログラムを週1回3カ月(全12回)行ったグループと、運動だけの教室を週3回3カ月(全36回)行ったグループでは、その後の習慣化に明らかな有意差は見られず、少ない回数の取り組みでも習慣化に結びつける有効な手法の一つの方向性が示されました。
解決すべき課題はまだありますが、運動を通したプログラム研究の必要性は今後ますます高まっていくでしょう。「健康支援学」は健康な社会づくりにつながる学問なのです。
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島根大学 人間科学部 人間科学科 講師 辻本 健彦 先生
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