誰でも跳び箱が跳べるようになる、子どもの運動感覚を育てる指導法
子ども時代の運動経験
運動の得手・不得手は、幼児期の運動経験と無関係ではありません。幼児期は、遊びを通して運動をしています。立つ・座る、歩く・走る、投げる・跳ぶなど、遊びを通して体を動かすことで、さまざまな運動能力を獲得するのです。ですから、幼児期にはいろいろな動きを、たくさん経験することが大切なのです。
ところが近年は、運動をともなう遊びが少なくなっており、子どもたちの運動能力の低下が心配されています。そこで文部科学省は、平成24年の「幼児期運動指針」で、幼児期に獲得すべき基本的な動きや運動習慣を示しました。こうした指針が必要なほど、遊びが減っているのです。それゆえ、遊びの中で運動能力の向上を図る方法が模索されています。
苦手意識を持たないように
例えば、「跳び箱」や「縄跳び」は、すぐにできるようになる子もいれば、そうでない子もいます。できない子に対して、無理に「練習」させたりすると、その子は運動に対して苦手意識を持ち、運動嫌いになりかねません。幼児期・児童期には、あくまで遊びの中で、どのように能力をつけていくか、という視点が大切なのです。そこで登場する方法の1つが、「スモールステップ指導法」です。
運動の構造を分析する
「スモールステップ指導法」を「跳び箱」の場合で考えてみましょう。まず「跳び箱を跳ぶ」という運動が、どういう構造なのかを、順を追って整理します。すると、助走→踏み切り→腕支持(両手を跳び箱の背について体を支える)→腕で跳び箱の背を押し突き放す→跳び越す、という動きが、前方へ進みながら行われていることがわかります。そこで、1つひとつの動作を、遊びの中に取り入れ、子どもが積極的にその動作を行うように工夫します。それを繰り返すことで、自然に必要な運動感覚を高めることにつながり、跳び箱を跳べるようになるのです。
跳び箱が跳べると、達成感が生まれ、自己肯定感が高まります。幼児期・児童期の運動能力の向上は、その後の人生に計り知れない大きな役割を果たすことにつながるのです。
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聖徳大学 教育学部 教育学科 教授 百瀬 定雄 先生
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