人の心を科学的に分析して社会に生かす「UXデザイン」

人の心を科学的に分析して社会に生かす「UXデザイン」

使いやすいアプリは何が違う?

「デザインはかっこよくて、機能も最新なのに、実際に使うと扱いにくい」、スマートフォンのアプリには、こんな感じで、いつの間にか使わなくなってしまうものがあります。多くの人に気に入られて使い続けられるアプリと、そうでないアプリには、一体どんな違いがあるのでしょうか?
世の中で使いやすいと言われているアプリの多くは、人がそれを使うときに何を考え、どんな気持ちで使おうとしているのかを丁寧に分析し、細部までよく考え抜かれた上で作られています。このように、人の心の動きや行動をきちんと理解した上で、それを製品やサービスなどに応用していくことを、「UX(ユーザー・エクスペリエンス)デザイン」と呼びます。

UXデザインに必要なもの

アプリに限らず、ものづくりでUXデザインを行うには、認知心理学などに基づいた基礎的な研究理論が必要です。例えば、「直感的な操作が可能」とうたわれている製品があります。「直感的な操作」と言いながら、テレビCMでさりげなく操作の仕方を見せるなど、実はいろいろな種類の認知が組み合わされて「操作」につながっていることがほとんどです。その上でUXデザインでは、人がそれを「使いやすい、使い続けたい」と感じられるように、細やかな気配りを1つずつ積み重ねて実装していくことが求められます。
日本はものづくりにおいて世界から高く評価されています。それは求められる性能や耐久性、コンパクトさといった点で優れているからです。ただこの「使いやすさ」という点では、まだまだ過渡期にあると言えます。

社会に広がるUXデザイン

最近では、例えば人道支援のための寄付金をより効果的な形で集めるための分析と工夫など、営利目的ではなく、さまざまな社会問題の解決のためにUXデザインを活用する「利他的UX」という取り組みも始まっています。人の心の動きを分析して応用するUXデザインは、社会の隅々にまで広がっていく可能性を秘めているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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千葉工業大学 先進工学部 知能メディア工学科 教授 安藤 昌也 先生

千葉工業大学 先進工学部 知能メディア工学科 教授 安藤 昌也 先生

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情報学、デザイン学、認知科学

メッセージ

世の中には、人の心の動きに興味を持っている人がたくさんいます。心理学というと文学や社会科学系の学問だと思われがちですが、工学系の学問にも心理学の考え方は深く関係しています。例えば、アプリなどの開発において、人がスマートフォンを使うとき、どんなふうに扱うのかを研究するのは、心理学の1つの分野と言えるでしょう。
大学で学べる学問は非常にたくさんあります。興味を持ったテーマを詳しく調べてみると、思いがけない研究分野との関連があるかもしれません。大学では、楽しい学びが待っています。

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芸の上達には、向き不向きというより、好きか嫌いかが大きく影響すると言われます。学問の道もそれに違わず、まずは興味・関心を持てることが大切です。そしてそれができたら、あとはちょっぴり努力とともに創造力を働かせればいいのです。いま「できない」ことはまったく問題ではありませんし、気にすることもありません。本学では、基礎から学べるカリキュラムが充実していますので、安心してあなたの未来が築けることでしょう。