成熟した国はどこへ向かうのか? ~国際金融のダイナミズム~

成熟した国はどこへ向かうのか? ~国際金融のダイナミズム~

国際金融はどう動いているか

経済学における「金融」とは、物との交換で使われる通貨と、その貸し借りに関わる現象を指します。1つの国を単位とすれば、国全体での物の取引とお金の動きを検討しますが、「国際金融」と言う場合には、国と国との間での貿易取引やお金の貸し借りが問題になります。国際的な取引では米国のドルが決済通貨として広く利用されているので、米ドルと各国通貨との交換比率(為替レート)がどのように世界経済に影響を及ぼすのかが重要な問題となります。

国のお金の稼ぎ方が変わる

一個人が銀行から借金をするのと同じように、一国も外国から借金をします。発展途上国は自国の資金が足りないので、先進国など他国からお金を借りて経済成長していく構図になります。
資源は少ないものの、高度成長時代の日本は、技術力を高めて、輸入原材料を加工し付加価値をつけた工業製品を輸出して経済を発展させてきました。これにともない、外国の債券や株の取得が進み、利子や配当の受取りが日本では多くなってきました。2005年には、対外的な投資収益(受取ー支払)が貿易収支(輸出ー輸入)に追いつきその後さらに増加を続ける一方、貿易収支は低下し近年は赤字も経験しました。新興工業国の台頭などに応じて、日本のお金の稼ぎ方も変わってきました。

先進国の将来は?

日本は、「成熟した債権国」に近づいています。貿易収支よりも投資収益が多いという、先進国の進む道の一つです。さらに進行すると、「資産を取り崩す債権国」となり、利子・配当受取りも減って、やがては、借入も必要な「未成熟な債務国」となります。最近、イギリスはこの段階に入ってきました。
戦後の日本経済は、製造業の盛んだったアメリカを手本にして発展してきました。しかし、手本と明確に言える国がない今、日本がどう進むべきか不透明な時代となりました。ますますグローバル化が進む中で、人・物・金の動きも変わります。そこでは、異なる文化・価値観の人と共存し、柔軟に理解し合える人材がさらに必要となるでしょう。

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先生情報 / 大学情報

成蹊大学 経済学部 現代経済学科 教授 大野 正智 先生

成蹊大学 経済学部 現代経済学科 教授 大野 正智 先生

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メッセージ

経済学は、大学で初めて学ぶ学問分野ですが、高校の歴史の授業などでは「経済」という言葉がよく登場していると思います。経済は、世の中のあらゆるところに関連しているため、経済学を学びたいと考えているなら、いまから、いろいろな科目をまんべんなく勉強しておきましょう。
突出して長けている科目や分野がなくてもいいのです。むしろ、経済学では、さまざまな現象を統合して考える視点が大事になってきます。たとえ、期末試験で良い点数が取れない科目があっても、その分野への関心は持ち続けましょう。

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