宝塚歌劇団とも関係あり!? 歌舞伎研究の面白さ
最初は女性が男性を演じた歌舞伎
現在の歌舞伎は、男性だけが舞台に上がり、女性の役も男性が女装して演じます。しかし、昔は違いました。歌舞伎は、慶長年間(1600年頃)に、出雲の阿国(おくに)という女性が男性の格好をして踊った「かぶき踊」が始まりとされています。その後、阿国のまねをした女歌舞伎が広がりましたが、寛永期に風紀を乱すとして幕府から禁止され、以後、男性が女性を演じる現在の形になりました。
歌舞伎のように特定の性だけで構成される異性装の劇が多く現れたことは、世界的に見ても特異といえます。ただ、日本では、歌舞伎が始まる前にも、平安時代に男装をして舞う白拍子(しらびょうし)が存在し、さらに昔には、神の言葉を伝える際に巫女(みこ)の男装もありました。
歌舞伎をヒントに成長した宝塚歌劇団
歌舞伎とは反対に、女性だけが舞台に上がるのが、宝塚歌劇団です。箕面有馬電気軌道(現在の阪急電鉄)の創始者でもある小林一三が立ち上げ、大正3(1914)年4月に幕を開けました。小林一三は、自身が歌舞伎好きであったこともあり、歌舞伎には「音楽がある」「歌がある」「踊りがある」などと、7つの長所をあげ、宝塚をそれに基づいた演劇にしていきました。
歌舞伎研究の切り口は多彩
歌舞伎の演目を宝塚で上演することもあります。例えば、「冥途(めいど)の飛脚」など、近松門左衛門の作品は人気があります。近松作品は、もともと、人形浄瑠璃(じょうるり)で演じることを前提に考えられた作品が多く、また、ストーリーも恋愛、人情をテーマにしたものが多いため、宝塚ファンの大多数を占める女性から支持されているのでしょう。一方で、今日も歌舞伎での上演が多い河竹(かわたけ)黙阿弥(もくあみ)の作品は、男性が演じることを前提に作られており、宝塚ではほとんど上演されません。
歌舞伎は、ただ観賞するだけでも楽しいものですが、作品、作家、時代背景、その後の影響など、多様な切り口で研究すると、さまざまなことを学ぶことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
フェリス女学院大学 グローバル教養学部 文化表現学科 日本・アジア専攻 ※2025年4月開設 教授 吉田 弥生 先生
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