江戸時代から推し活? 日本人のアイドル文化の起源に迫る

アイドルと宗教との共通点
アイドルは漢字で「偶像」と表現されることもあります。偶像とは神や仏をかたどって作られた像のことで、宗教では崇拝の対象です。本人の実像ではなく、それを「かたどったもの」を大切にするのは日本のアイドル文化にも通じています。ライブなどがなく本人に接することができないとき、ファンはアイドルのアクリルスタンドやポスターなどのグッズを見て思いをはせているからです。
江戸時代のアイドル
アイドルやそのグッズを推す文化の起源は、江戸時代にあります。江戸時代には浮世絵が流行し、特に芸者や歌舞伎役者の女形などの美人画が人気を集めました。現代でいうブロマイドのようなものです。1760年代頃になると、笠森お仙という町娘が浮世絵に登場しました。東京の笠森神社にある茶屋で働いていた娘です。高いお金を払わないと会えない芸者たちとは異なり、お仙には茶屋に行けば会えます。いわばお仙は元祖「会いに行けるアイドル」だったのです。江戸の男性たちは浮世絵というメディアによって「お仙に会いたい」、「応援したい」と思うようになり、茶屋に足を運びました。
ファンの心理は変わらない
明治時代になると、寄席で若い女性が歌舞伎のストーリーを語る「娘義太夫(むすめぎだゆう)」が大人気になります。中には語りの途中に「どうするどうする!」とコールをして盛り上げるファンや、終演後に人力車で移動する娘義太夫を追う「おっかけ」も見られました。このように、推しアイドルを見つけて応援するファンの心理や行動は、現代とあまり変わっていないのです。
一方でアイドルが提供するコンテンツや、アイドルとファンとの間に入るメディアの種類は時代によって変化しました。江戸時代には浮世絵、昭和半ばからはテレビ、2020年代はインターネットでの配信が主流です。メディアによって適した売り出し方とは何か、アイドルの送り手であるプロデューサーは何を工夫したのかにも目を向けながら、アイドル文化の本質を見極めようと研究がなされています。
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先生情報 / 大学情報

江戸川大学メディアコミュニケーション学部 マス・コミュニケーション学科 教授西条 昇 先生
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芸術学、アイドル論先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?