進化する医療検査技術にともない、臨床検査技師の役割も変化!?

進化する医療検査技術にともない、臨床検査技師の役割も変化!?

病気の原因やメカニズムを解明する病理学

病気になった原因や病気のメカニズムを研究する学問を病理学といいます。近年、医療の現場では、検査技術がどんどん向上し、尿、血液はもちろん、喀痰(かくたん)、胸水(きょうすい)などから、さまざまな体の状態やがん細胞の有無などがわかるようになりました。
中でも、注目を集めている分野の1つが、プロテオーム解析(プロテオミクス)と呼ばれるタンパク質の研究です。がん組織や血管などからさまざまなタンパク質を採取するだけで、特定の病気に関係するタンパク質、あるいは老化にともなって増加または減少するタンパク質がわかれば、病気の予防や早期治療、老化の予防、健康寿命の延びなどにもつながっていくでしょう。

1滴の血液でがんがわかる時代に

2017年には、1滴の血液から13種類のがんの有無を同時に診断できる検査法が発表されました。これは、がんが血中に分泌する物質のマイクロRNAを活用するものです。まだ、事業化には至っていませんが、実現すれば、医療の大きな転換になります。
すでに実際に使われている技術もあります。2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏の研究をベースに開発されたタンパク質の質量分析装置は、多くの研究所や大学で使われており、なくてはならない存在になっています。

将来は病気の診断を人工知能が行う!?

こうした検査で重要な役割を果たすのが、臨床検査技師です。病院では、臨床検査技師が検査を行い、臨床検査科医師・病理医と協力して働くことが一般的になっています。
今後も検査技術が向上し、発展が続くことは間違いないでしょう。ただ将来的には、病気の判断などは、技師の能力を超えた人工知能(AI)が行うのではないかと予測する専門家もいます。これからは、医師から指示された検査をただ行うだけではなく、機器や技術の開発などに携わったり、外国語を習得して世界で働いたり、情熱や行動力を併せ持つ技師が求められるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京医科歯科大学 医学部 保健衛生学科 教授 沢辺 元司 先生

東京医科歯科大学 医学部 保健衛生学科 教授 沢辺 元司 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

病理学、病理検査学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私は長年、プロテオーム解析(組織内に存在するタンパク質全体の解析)を使って、血管の老化を研究してきました。臨床検査学はプロテオーム解析のような高度な解析技術を吸収して進化しており、それは今後も続きます。
職業としての臨床検査技師は、医師や看護師と同様、医療に貢献し、満足度が高い仕事です。検査ではミスが許されず、緊張感と正確性が求められますが、物事を丁寧にコツコツできる人なら、きっと活躍できると思います。あなたも私と一緒に臨床検査学を進化させませんか。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京医科歯科大学に関心を持ったあなたは

東京医科歯科大学は、医学・歯学・保健衛生・口腔保健からなる医系総合大学であり、高い倫理観を備えた医療人を養成します。社会の要請に応え得る医師、歯科医師、コ・メディカルスタッフの養成は勿論、世界の第一線で活躍し得る研究者、指導者の育成を目指しています。したがって、大学は勉強するところではなく、勉強する方法を自ら学び、自律するための場であるとの認識を学生諸君に徹底しています。